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デリヘル嬢時代の憂鬱「カラダを売った向こう側」

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デリヘル嬢時代の憂鬱「カラダを売った向こう側」
Original Update by Lira ♥

ライター夕花みう

「俺、良かったと思ってるよ。みうたんに出会えて。だから、俺も…」

 埋められない隙間…ポエマーチックで厨二病的な言い方を拝借すれば、“心の風穴”があなたにはあるだろうか?そこから吹き込む風が寒くて仕方ない。とりあえず出来合いの何かで塞ぎたい。そんな風穴はないだろうか。

「わぁ…めっちゃタイプ…」

 こういう類の店を利用するのが初めてだと言う彼は、ドアを開けるなりそう言った。「ありがとう」と精一杯の愛想を振りまく。別にそれが心からの言葉であろうとなかろうと、わたしには何だっていいのだ。

「えっ…びっくりした、ほんと…」

 当時のわたしはデリヘル嬢だった。車に乗り込み、夜な夜な知らぬ男性の家やホテルに出向き、相手をする。そして、男の人の歯が浮くようなセリフも、歓喜もせず捻くれもせず、普通に“流せる”ようになってきていた。

 そんなデリヘル嬢としてそこそこ擦れていたわたしの、とある客との出来事である。

風俗嬢としてのみうたんとはエッチしちゃいけないと思って



 案の定、彼のプレイはとても濃厚。シャワーも浴びず、浴室でいきなりクンニをしてくる。しかも、恋人でもしないぐらいのねっとりした視線を送ってくるのだ…。

「ねぇねぇ、目、見てくれないの? 気持ちいい?」

 こんな調子で、とにかく苦痛だった。かなりラブラブなカップルでないと厳しいようなプレイばかりを要求してくるのだ。ちゃっかりと本番も求めてきた。恋人に不満があるのか寂しいのか、それを埋め合わせるような性行為をしたいのだろう。

 プレイを終えて、長めのコースをさらに延長し、彼とはバイバイした。

「連絡先…聞きたいけど…」

 もじもじと彼は言った。長身の大人の男性がクネクネしている様子は、正直少しキツいものがある。わたしはわりと感情が出やすいタイプだ。恐らく引きつっているであろう笑みを向けて、

「また今度会えたらねっ♡」

と、精一杯の愛想を振りまいた。

 次の週、彼はまたわたしを指名してくれた。

「寒いかなぁって思って…」

 布団をしっかり温めて、雑誌で話題のケーキまで買って。最長時間の予約を入れ、それでもまだ延長したいと彼は告げる。5万円以上の料金である。この前だって、4万円ほど使ったばかりだ。

「お金お金…」

 彼はそう言いながら、まるでお年玉を貯金しておくような箱から祝辞用封筒を取り出し、わたしに諭吉を渡した。きっと何らかのお祝い金で貰ったものなのだろう。
 しかもその時、雑費をまとめたメモが入っていたのを見てしまった。家賃はいくら、食費と光熱費はいくら…デリヘルに2週間で約10万円のお金を使った彼の手取り額は、20万ちょっとである…。

「あっ、みうたん…。俺、バカかもしれないけど風俗嬢としてのみうたんとはやっぱりエッチしちゃいけないと思って。だから、いつか俺と付き合ってくれるまで、我慢することにした。俺に会いに来るつもりでいてほしい」

 体力的には非常にありがたい話。
 だが、風俗嬢であるわたしとお客様である彼との、その長い長い指名時間をプレイ抜きで埋める行為がどれだけ大変な事なのか。それに気づいたのは、後になってからだった…。

 こんな調子で彼はわたしを毎週呼び、長い時間の予約をくれた。

そして、どんどん重たくなっていった



『ねぇみうたん』

 彼は不眠症らしく、深夜に頻繁にLINEが届いた。

『俺、みうたんに出会えて本当に良かったと思ってるよ…すごい感謝してる。俺、元カノのこととか嫌なこととか全部忘れられてるし…うん、なんか寂しくなっちゃった。なんで泣いてんだろ…。お仕事中にごめんね』

 どこか病んでいて、どこか壊れている彼の今の拠り所はわたしだった。でも、わたしはそれを真剣に受け止めるほど誠実な女性でもなければ、仕事熱心なデリヘル嬢でもなかった。

『あんまり夜中に起きてると考えすぎちゃうから、寝なよ』

 そっけなくLINEを返しても、彼は10倍ぐらいの文量でわたしへの感謝と自分の想いを綴ってくるのだった。それはまるで、自分に言い聞かせるかのように。
 そして、どんどん重たくなっていった。

「みうたん、外まで送るね」

 彼はいつも外まで見送りに出てくれた。ドライバーの車が見えなくなるまで、ただひたすらにじっとわたしを見ているのだ。

「つ、疲れたぁー…」

 そそくさと親しいドライバーの車に乗り込み、思わず独り言が漏れる。仲の良いドライバーだったことに安心した。
 当時、売れてはいたものの、なぜか色客ばかりで今回の彼のように重たい客が多かった。わたしは度々ワガママを言って、予約が一杯なのに欠席したり、遅刻して店を困らせていた。限界だったのかもしれない。
 そんな時、決まって迎えに来てくれるのがこのドライバーだった。きっと店もそれを分かっていたのだろう。

「お疲れさまです。なんかあの人、キモイですね。こんな夜中に、車が遠くに見えなくなるまでジーッと見てくるなんて…」
「でしょ?でもまぁ、いいお客さんだからね…」

 ちなみにこの頃、デリヘル嬢として働くのはもはや精神的にギリギリになっていた。頻繁に無断欠勤を繰り返す日々。とはいえ、デリヘルや水商売で狂った金銭感覚は、簡単には元に戻らない。

そんな安っぽいドラマに酔うなよ…



 渋々出勤したその日も、やはり彼は指名をくれたのだった。

「みうたん、全然出勤してないから、俺すごく心配で…。LINEも返ってこないし…」
「ごめんね。なんか、仕事キツくてさ…」

 適当に受け答えする。その頃のわたしは、もはや指名してくれたお客様を大事にすることすら出来なくなっていた。その優しさにも苛立って、わたしは目も合わせずベッドに潜り込む。

「ねぇ、みうたん…今日さ…俺さ…みうたんと…エッチしたくて…」
「付き合うまでしないって言ったじゃん?眠いから無理。一緒に寝よ」

 働いていながら自分勝手だと思う。お金を貰っている以上はプロなのだから、失格だとも思う。
 でも、当時のわたしはその彼の探るような媚びるような目線も態度も、全てがイラついて仕方なかった。

 長身の彼が、背の低いわたしを覗き込むように見る。

(あぁ…なんでそんなキラキラした目で。あたしは風俗嬢。あなたは客。わたしは体を売るような女だし、あなたはそれを買ったに過ぎない。そんな安っぽいドラマに酔うなよ…)

 ぐるぐるとドス黒い感情が渦巻く。視界もろとも蜷局(とぐろ)を巻き出しそうなほどに。
 一瞬、ほんの一瞬だけ不服そうな顔をした彼は、すぐにその表情を封印させる。

「みうたん、お疲れ。でも、チューして」

 次第に、彼のあの箱のお金も尽きてきたのだろうか。
 とにかく理由をつけて、わたしと外で会いたがるようになった。最初は「お菓子を渡し忘れたから…」。そっけないわたしは、疲れていることを言い訳に断る。

 そして、決定的に変わった事がある。あのプレイを断った日以降、彼はわたしを呼ばなくなった。それをホッと安心したような、何だか複雑な気持ちで受け止めていたわたし。
 しかし、決まって出勤の予定が入っている夕方には、

『みうたん、お仕事頑張ってね。今日、体調が悪いから会えない…』
『今日呼びたかったけど、実家に帰るから呼べない…』

などと、わざわざ丁寧に呼べない旨と理由のLINEが毎回届くようになった。

 そんなある日、わたしはもう1つの事実を知ることになる。

…あっ、忘れてた。あたしは“商品”なんだった



 給与清算の時、わたしは何気なく事務所の予約システムの管理画面を見てしまった。そこには、どこの家、何分コース、どの女の子が行くかなどの情報がエクセルで打ち出されていた。

「え…これって、わたしのお客さん、ですよね…?」

 そこにある建物名と名前は、間違いなく例の彼のものだった。

 まだ彼からはほぼ毎日LINEが来ていた。今日も呼べないこととその理由。そして病んでいるような、わたしへの気持ちを綴るような、そんな自問自答の文言と共に。デートにも何度か誘われていた。
 店長は顔を曇らせた。わたしの方を見ず、早口で言う。

「あぁ、今日は他の女の子の指名で入ってる」

『ピコン』

 携帯電話が震えた。彼からのLINEだった。

『みうたん、そろそろお仕事終わったー?終わるまで起きて待っちゃった。笑』

 読み終えもしないうちにわたしは無言でLINEをブロックした。横にサッとスライドさせるだけで、簡単にこんな関係は切れてしまう。

(さようなら)

 無感情に思った。

 わたしに彼を責める資格はもちろんない。ただ店とシステムを利用しているだけなのだから。
 でも何故かわたしは、何かポッカリと穴が空いたような、ずっと騙され続けていたような感覚を覚えた。胸がズキズキと痛む。
 結局のところ、つまり結局のところ、わたしは本気で愛してもらっていたわけでも、好かれていたわけでもなかったのだ。

(ねぇどうして。なのにどうしてこんなに悲しいんだろう?)

 どこかでわたしは彼の行為を拠り所にしていたのだろうか?答える気もなかったのに?
 …そんなの、傲慢すぎる。彼のあの目線も、彼のあの態度も、彼のあの優しさも、彼のあの深夜のLINEも、全てが、全てがよく分からない。なんでこんな事にショックを受けてるんだろう。

(…あっ、忘れてた。あたしは“商品”なんだった)

 それからしばらくして、わたしはデリヘルをアッサリと辞めた。別に彼の事が原因ではない。よくあるこんな出来事に耐えられない時点で、わたしはデリヘル嬢に向いていなかったのだろう。
 第一、わたしはお金のために体を売っているのだ。別に相手にした客みんなに好かれるために働いていたわけではないのだから…。

最後に


 わたしは「体を売る」という事がよく分からない。「女を売る」という事も。キャバクラでNo.1を取ったって、デリヘルでNo.1を取ったって、性感マッサージでNo.1を取ったって、わたしをただただ愛してくれて、隣で腕枕をして寝てくれる彼氏のことだって、それですら。
4.5 rating

当記事の著者

現役女子大生ライター風俗・お水業界三冠王夕花みう
現役女子大生ライター。キャバクラ、デリヘル、性感マッサージでナンバーワンを取った三冠王。性愛道の修行僧、もしくはエロテロリスト。

コメント&トラックバック

  • Comments ( 3 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. 愛は、風俗嬢に限らず、幻想だと思います…

    • yasuさん、コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい、ごめんなさい。
      幻想だとわかっているからこそ、欲しくなるのかもしれませんね…。

  2. 風俗嬢さんが初めて人間らしい感情も持っているのだと実感した投稿でした。

    俺は、お金とSEXに狂った人間の形をした物質or化け物としか思っていなかったので。

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