本レポート内に出てくる会社は、守秘義務があるために名は伏せさせて頂く。
本文に出てくる数値も、特定されないように微妙に変えてある。
運営の仕方、税金の申告の有無は会社ごとに違いがあり、俺の知るところではない。
しかしながら、「出会い系サイト = この会社と同じ」という誤解がないようにお願いしたい。
WANTED
- 写真
- なし
- 会社名
- A
- 資本金
- 不明
- 代表者名
- B
- 業務
- 悪徳出会い系サイトの運営、宣伝
- 活動エリア
- 不明
序章
これは、取引先との懇親会で聞いた話。
どの職種でも同業者との酒の席は、仕事の話がメインになることが多い。
「士業」にありがちだが、彼ら(彼女ら)の話は専門用語のオンパレードであり、一般人には笑いのツボさえピンとこないものである。
そんな中、興味深い話を聞いた。
とある税理士の先生が、「最近、珍しい業種の会社と顧問契約をしたんだ。出会い系サイトを運営してるんだってさ」と切り出した。
俺は一瞬ドキッとした。
「出会い系サイトが、税金申告なんてするんですか?」
先生の話を要約すると、以下のとおりである。
その出会い系サイトを運営しているB社長は、あるテレクラの支店長だったが、国税局の査察が入り、自身の未申告を含めてかなり酷い体験をしたとのこと。
それゆえに、B社長が起業して出会い系サイトを立ち上げたときには、さすがに申告を考えたらしい。
その先生は続けて、「あれって儲かるんだな~。通帳の記帳は男の振込名でいっぱいだったよ(笑)」
クライアントの通帳や帳簿を見て、お金の流れを把握するのは先生の仕事上の業務である。
裏金や裏帳簿がない限り、その会社の取引内容を把握して税金申告をする。
驚いたのは、その出会い系サイトの月商が、1,000万円を軽く超えているということ。
「ポイントの購入は3,000円から」ということだが、仮に1人1万円使うとしても、1,000件もの振込があることになる。
「それでさぁ~、通帳の入金欄は男の名前ばっかなんだけど、出金欄は女の名前が多いんだよ。君はこの仕組みわかる?(笑)」と先生が言う。
カネのカラクリ
(あぁ…あれか)
俺はすぐにピンときた。
悪徳出会い系サイトを利用する男性の天敵、『サクラ』への給料の支払いである。
ハローワークや女性週刊誌で、「オペレーター」、「電話番」などの名目で求人募集をしている。
サクラにはマニュアルや定型文を提供し、あとは数をこなす(ポイントを消費させる)ごとに歩合給を支払う。
基本的には女性が好ましいが、どうしても頭数が揃わない場合、顔が出ないので性別にはこだわらない。
「でも、会えなければ詐欺サイトという噂が広まりますよね?」
その先生は、池上彰の口癖を真似て、「いい質問ですねぇ~」とニヤリ。
この出会い系サイトは、表と裏の2社から成り立っている。
表面上の顧客窓口になる会社と、裏で全てを仕切る本社である。
消費税免除の恩恵や警察法なども含めて、悪い評判が立ってきたら、2年ほどで表の会社を潰す。
風当たりが強くなったらドロン、新規会社を設立して新たな出会い系サイトを立ち上げるのだ。
すっかり様変わりするので、気が付かない男性は下心を出し、またしても取り込まれてしまう。
道徳的にはかなり問題があるが、税務上の違反はない。
その先生は言う。
「サイトを見せてもらったんだけど、とてつもないVIP会員制度があるんだよ」
(悪徳出会い系サイトのVIP会員…想像したくもないな)
VIP会員の真実
そのVIP会員とは、月額40万円を支払う「ブラック会員」のことだったのだ。
「ブラック」と名がつくほどだから、その待遇はどれほど良いのだろうか?
キャッチフレーズは、「あなた好みの女性との出会いを完全サポートします!」というものである。
好みの女性のタイプを登録すると、マッチした相手を月に5人、出会い系サイト内で紹介してくれる。
「ブラック会員期間は、他の男性からの紹介女性へのメールを、サイト側でストップする」という特典がある。
つまり、自ら探さなくても好みの女性を用意してくれ、期間中はライバルを寄せ付けないというのが「ブラック会員」である。
その代償として月額40万…もはやボッタクリというレベルではない。
口説けるかどうかはその男性しだいだが、参加している女性がサクラなら、それらしく振る舞うのは難しくない。
「そんな高額な料金を支払う男性がいるんですか?」
「いるんだよなぁ~、馬鹿な男が(笑)」
甘い話に乗って大金を支払ってしまう男性たち。
その中には、思うような結果が出ずに、怒り心頭の人間がいて当たり前である。
そのときの対応として、「サポートはするが、100%会える保証はしていない」と説明する。
が、どうも釈然としない。
「大金を払って成果が出ないのに、そんな説明で納得するんですか?
弁護士使って訴えられたらどうするんですか?」
先生はニヤリと笑い、相変わらず「いい質問ですねぇ~」と言う。
その悪徳出会い系サイトの対策とは、一体なんだろうか?
鉄壁の訴訟対策
もし弁護士を使って訴えられた場合には、運営会社は争うことは一切せず、速やかに全額返金して和解する。
揉めて事態を悪化させて目をつけられるよりは、このほうが利口であり理想的なのだ。
ブラック会員の本当のターゲットは、「会えないのは自分のせい」と考える責任感の強い男性。
出会い系サイトを使っていることを表に出せない立場の既婚者や、お金を取り戻す術を知らずにあきらめてしまう男性も含まれている。
本来なら詐欺罪で訴えたり、慰謝料の話も出てきそうなものだが、実際は一個人で立証するのは困難なのだ。
また、ほとんどの男性は、自分の出資を取り戻して満足してしまう。
「出会い系サイトなんかやるヤツの気が知れない。
駅で20人くらいの女に声をかけたほうが、まだ可能性があるだろ(笑)」と先生は言う。
「優良出会い系サイトを使えば、出会えますよ?」
「本当か?どうやって?
まあいいや、私は出会い系サイトには一切興味ないし」
俺はそれ以上反論することもできず、ただ苦笑いするしかなかった。
先生の中では、出会い系サイトを使う人は「アルバイトのサクラ女性」と「オタク系のモテない男性」しかいないらしい。笑
実際にサイトに出入りする人は、普段は真面目だし、パッと見でも普通の人がほとんどなのだ。
利用する出会い系サイトさえ間違えず、きちんとしたステップを踏めば、「駅で20人に声をかける」よりもよっぽど出会える(笑)
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