
今回は、当該法律の施行前に知っておきたい内容をまとめてみた。
正式名称は「私事性的画像記録の提供被害防止法」だが、当記事では「リベンジポルノ防止法」の名称を用いる。
1.「リベンジポルノ防止法」の内容
「リベンジポルノ防止法」の施行後は、以下の行為に刑罰が科される事となる。
(1)第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、私事性的画像記録(物)不特定もしくは多数の者に提供または公然と陳列した場合に「公表罪」を設け、3年以下の懲役または50万円以下の罰金とする。
(2)(1)の行為をさせる目的で私事性的画像記録(物)を提供した者(例:LINEなどによって拡散目的で特定少数者に提供)に「公表目的提供罪」を設け、1年以下の懲役または30万円以下の罰金
──とする。それぞれ親告罪。
本人が第三者に見られることを認識した上で撮影を許可した画像(アダルトビデオなど)は除かれる。
【出典:リベンジポルノ法案、成立へ 流出者に刑事罰】
「私事性的画像記録(物)」の定義は下記の通り。
●「私事性的画像記録」(電子情報)・「私事性的画像記録物」(有体物)
=①~③のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(※)に係る記録・物
※本人が第三者に見られることを認識した上で撮影を許可した画像(アダルトビデオ・グラビア写真等)を除く
①性交又は性交類似行為に係る人の姿態
②他人が人の性器等を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
③衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
【出典:私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律案 概要】
相変わらず法文は分かりづらい。
要約すると、「本人の許可を取らずに裸の写真や動画をばらまいたら逮捕しちゃうぞ!」という事になる。
「リベンジポルノ防止法」は被害者からの親告後に適用される親告罪。つまり、被害者の告訴が無ければ裁判をすることは出来ない。
「バレなきゃいいや!」なんて考えちゃダメだぞ。
2.「リベンジポルノ防止法」はなぜ成立に動いたのか?
リベンジポルノ法案の成立を誘引したのは、国内稀に見る卑劣なリベンジポルノ事案、「三鷹ストーカー殺人事件」である。
2013年10月8日、芸能事務所に所属していた当時18歳の女子高生「鈴木沙彩」さんが、東京都三鷹市の路上で首や腹を刺されて倒れていたことから事件が発覚。鈴木さんは搬送先の病院で死亡が確認された。
逮捕されたのは当時21歳の「池永チャールストーマス」容疑者。事件から約1時間30分後、同市の路上で血の付いたズボンを穿いた男を署員が発見。男を職務質問したところ、「私がやりました」と答えたため、殺人未遂容疑で緊急逮捕した。

池永容疑者は鈴木さんの元交際相手だった。
池永は10月2日から10月6日にかけて、交際中に撮影した鈴木さんの性的な画像や動画をアップロードした。更には10月5日から10月8日に逮捕されるまで、投稿サイトや巨大掲示板のスレッドなどで、自身がアップロードした動画のURLを投稿していた。
Check三鷹ストーカー殺人事件
当該事件からリベンジポルノが社会問題化し、国会でも議論されるようになった結果、「リベンジポルノ防止法」が成立したのだ。
3.「リベンジポルノ」は現行法でも対応可能
現行法では、リベンジポルノが公開された場合に該当するのは以下の罪状である。
・わいせつ物公然陳列罪(刑法175条1項)
2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金
※ただし、少なくとも現在の日本では、性器が写り込んでいる必要がある。
・児童ポルノ公然陳列罪(同法7条4号)
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金
※被写体が18歳未満の場合
・名誉毀損罪(刑法230条1項)
3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金
・ストーカー規制2条8号
6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
【出典:マイナビニュース】
リベンジポルノは、実は現行法でも十分にカバーできるのだ。
それでは、「リベンジポルノ防止法」はどのような効果をもたらすのか。
まず新法を定めることで、リベンジポルノを今まで以上に処罰しやすくなる。また、違法行為と周知することは、当該事案の抑止力になるだろう。
リベンジポルノを未然に防ぐ効果が期待できる以上、やはり必要不可欠な法律と言える。
4.施行後、具体的にどう変わる?
「リベンジポルノ防止法」の施行によって最も影響を受けるのは、アダルトメディアとその利用者(投稿者)だろう。AVのみを扱っているなら問題は無いが、例えばハメ撮り画像・動画の掲載、アップロードはこれまで以上に厳しくなっていく。
当該法律は本人による許可の有無がカギとなっている。許可を得ているのなら良いが、大半はそうではないだろう。
したがって、アダルトメディアの運営者や利用者は、より慎重なチェックが求められる。
以下は、「リベンジポルノ防止法」の施行後に合法・違法となるケースを俺なりに分類したものである。
なお、その他の法律は考慮していない。また、被写体は18歳以上、画像・動画はわいせつ物ではない(性器部を修正している)ものを前提とする。
合法
※「本人の許可(公表も含む)を得て撮影した性的な画像・動画」を1と表記する。
・1を公表、提供する。
・1を第三者が公表、提供する。
・被写体の顔部分に修正を加えた1を公表、提供する。
・被写体の顔部分に修正を加えた1を第三者が公表、提供する。
違法
※「本人の許可(公表も含む)を得ずに撮影した性的な画像・動画」を2と表記する。
・2を公表、提供する。
・2を第三者が公表、提供する。
不明
・被写体の顔部分に修正を加えた2を公表、提供する。
・被写体の顔部分に修正を加えた2を第三者が公表、提供する。
現状、考え得るケースはこんなところだろうか。
本人の許可を得ていれば、「リベンジポルノ防止法」に抵触することは無い。
最後に
一度ネット上に流出した画像・動画を回収することは不可能。
性行為の場面を記録したいという気持ちも分からなくはないが、その場合は厳重な自己管理が求められる。まして復讐の道具に使うなど、決してあってはならない。
リベンジポルノの被害に遭わないためには、撮影をしない・させないことが根本的な防止策だ。
男女を問わず、この機会に「リベンジポルノ」に対する認識を深めて欲しい。
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