今年9月10日、とある恐喝事件を起こした3名の容疑者が逮捕された。会社員の嵜村(さきむら)一郎容疑者(31)と、妻のパート従業員、風吹(ふぶき)容疑者(21)、そして元関西ジャニーズJr.の田中大樹容疑者(30)である。
その事件は、新種の美人局の存在を浮き彫りにした。
ミニスカートを穿かせた妻(風吹)をわざと盗撮させ、近くで見張っていた夫(嵜村)と田中が盗撮者を脅して示談金を要求する。それは“盗撮美人局”と言うべき手法だった。
詳細は以下の記事を参照して欲しい。
Check悩殺ミニスカ妻、実は盗撮おとり役!? 恐喝夫婦を逮捕
Check元関西ジャニーズJr.田中大樹「盗撮美人局」で逮捕!わざと撮らせてカネ巻き上げ
通常、美人局は児童買春や不貞行為をネタに脅すのだが、盗撮を利用した事案はこれまでに例が無い(もっとも、表面化していなかっただけだろうが)。
先月29日、匿名の男性(以下、X氏)から本事件に関する情報が寄せられた。
彼は昨年、大阪府で盗撮美人局の被害に遭ったと言う。
X氏が見た“盗撮美人局”
既婚者のX氏は、ある会社の幹部社員をしている。基本的には真面目に働いている彼だが、女子大生との割り切りを趣味とする裏の顔もあった。
昨年の夏頃、割り切りで会った女性をどうしても撮影したくなり、ネットで知った「無音カメラ」のアプリをスマホにインストールした。
(ちょっとくらいなら…)
これが、X氏の最大の失敗だった。
アプリをインストールしてからというもの、普段は気にならない電車内の女性を妙に意識するようになった。
ある日、たまたま乗った電車での事。
前に座っていた女性が、とんでもなく短いスカートを穿いて脚を開いている姿が目に入った。
眼前には、ミニスカートで両脚を大きく開放する女性がいる。
つい、X氏は無音カメラのシャッターを押した。
当時の心境を、彼は「たまたま座ったと言うより、女性の股間に吸い寄せられたんだと思います」と語っている。
駅に到着したX氏は、改札を降りたところで何者かに背後から肩を掴まれ、トイレに連れ込まれた。
その相手は、ミニスカ女性の右隣に座っていた男だった。
「盗撮したやろ、オッサン!」
「駅員に報告しようか?」
「こういう軽犯罪の罰金は3万以上らしいな」
そう立て続けに凄まれた。
X氏は突然の出来事に驚いたが、盗撮したことは事実であり、確認はしていないものの、おそらく写真には下着が写っている。また、社会的地位を守るため、いかにして丸く収めるかを考え、『金で済む事なら払ってしまおう』との結論に達した。
そこからは仲の良い友人同士のように、肩を並べてATMを目指した。
道中、男は呪文のように
「罰金は3万円らしいな」
「わいはそれしか言わへんで」
と唱えていた。
金銭を要求していたら、万が一逮捕された時に刑罰が重くなるため、相手が自主的に金を払うように仕向ける。これが恐喝犯の常套手段である。
男はこのことを知っていた。
X氏はATMで5万円を下ろし、男に手渡す。
「わいは何も要求してへん。オッサンが勝手に小遣いくれたんやからな」
そう吐き捨てるように言い残し、男は梅田の地下街を歩き去って行った。
「後から考えれば、あのミニスカート女はグルだったんだと思います」
X氏はこう述べている。
不幸中の幸いだったのは、身分証明書の提示を要求されず、暴力を振るうような仲間も現れず、かつ少額の金銭被害で済んだことだ。
もし名刺や免許証等から個人情報を握られていたら…X氏でなくともゾッとする。
X氏は、この時に上手くいった経験から、件の男が犯行を繰り返したのではと考えている。
冒頭のニュースを見ると、容疑者らの要求した示談金は50万円。結果的に脅し取った金銭は1万円だが、その要求額は、X氏が言われた「3万円」を大きく上回っている。
また、嵜村容疑者は「1年ほど前に妻が盗撮被害に遭って思いついた。これまで20回くらいやった。簡単に金が手に入り癖になった」と供述している。
X氏が“盗撮美人局”に遭遇したのは昨年夏頃。時期も一致しており、彼が最初の被害者であった可能性もあり得る。
X氏を恐喝した男が、今回逮捕された容疑者の中にいるなら良いのだが、そうでない場合、まだまだ同様の犯罪が起こる危険性もある。もしくは、既に起きているのかもしれない。
最後に
性犯罪者には常習犯が多い。それは盗撮も同様だ。
「簡単に成功したから、次も上手くいく」
このような思考が罪の意識を麻痺させ、スリルや快感を求めて習慣化していく。
そうなってしまえば、愚行は最後の時まで止まらない。
俺は取材のために“必撮(ひっさつ)アイテム”を持っているが、女性の下着や裸体を撮影した事は一度も無い。何故なら、そのような盗撮行為の末路を知っているからだ。
冒頭の事件では、容疑者らが盗撮されることを想定しており、「人を著しく羞恥させる」という府迷惑防止条例上の盗撮にはあたらないと見ている。
つまり、被害者は「盗撮を促された」として、罪に問われなかったのだ。
(これがあれば、また間違いを起こしてしまう)
そう考え、X氏はすぐに例のアプリを削除した。賢明な判断である。
1年前の盗撮美人局事件は、彼にとって荒療治になったことは間違いない。
ネット上では実に様々な形のカメラが流通しているが、それらは「防犯機器」として販売されている。記事中に登場した「無音カメラ」アプリを含め、読者諸兄は誤った使い方をせぬよう、扱いにはくれぐれも注意して欲しい。
コメントする(承認制です)