読者投稿24歳の男性
求人雑誌を見ていると、たまに『嘘だろ?』と思うような募集を目にする。
気にはなるが、普通なら君子危うきに近寄らず。
しかし、虎穴に入らずんば虎児を得ずな俺は、実際に潜入することにした!
ここはどこの軍隊ですか
簡単な営業です♪
未経験者歓迎♪
男女、年齢不問♪
先月の平均給与66万円♪
スーパーの入口に置いてある無料の求人雑誌で、異常なほど高収入の募集を発見!
(……未経験でも年配者でも女でも出来る仕事なら俺なら楽勝じゃん)
(……平均給与が66万円なら、普通の成績でも66万円くらいの給与になるってことじゃん)
早速電話。
面接のアポを取り、三重県の某ビル内を訪問する。
会社はオフィス街にあり、面接官もごく普通の人だ。
売る商品は大学入試用の教材と塾のセット販売で、約100万円。
本当に誰にでも出来るということと、課長クラスになれば自分は動かず、部下の売り上げだけでウン百万円の給与になることを聞いて入社を熱望!
試験もなく、面接OKであっさり入社が決定。
基本給は10万円、保険や年金は無いため、自分で入ることになる。
契約を1つ取ると約10万円のバックがあるから、月に5本の契約を取れば約60万円の給与になる計算だ。
初出勤して感じたのは、会社の雰囲気が普通と違うということ。
全体的にムダにテンションが高すぎるのだ。
上司が出勤してきたら、座っている人も起立して大声で挨拶!
全員で掛け声しながらのラジオ体操!
所長の大声での朝礼!
褒める時も叱る時も酸欠になるくらいの大声だ!
分かりやすく言うと“軍隊”である。
俺の最初の仕事は、渡された沢山のプリントに書いてある文章の暗記だった。
それらは何パターンもあり、会社や商品の説明、よくある質問に対しての応答集などが書かれていた。
プリントを読んで、大体どんな会社なのかが理解できた。
一流の有名塾と聞き間違えそうな言い回しや、良い方向に誤解するような部分が多数あった。
(……女々し過ぎる……)
何度も暗記テストを受けてやっと合格。
晴れて電話でのアポ取り作業に取り掛かれる。
アポが取れない社員への所長アタック
暗記テストに合格すると、名簿を渡された。
某高等学校の2年生の名簿である。
他にも、三重県の殆どの高等学校の名簿が揃っているらしい。
上から順番に電話してアポを取るよう指示される。
ただし、既に皆が何回も使っている名簿だから、電話を受ける方も『またか』と思うだけでアポ取りは非常に難しい。
正直、気が遠くなる…。
ヘビースモーカーの俺は煙草を吸いながら電話していると、所長と目が合った。
(ヤバイかな?)
所長が全速力で走ってきて俺の座ってる椅子をキック!
俺は椅子ごと飛ばされて壁に激突!!
「コラー!お前アポも取れんのに何様や!!」
本当に軍隊だ。
この会社、長居は出来ないな…。
何日もひたすら電話しまくっていると、ようやくアポが取れた。
やっと外に出れる。
さぁ、ここからが勝負。いざお客様宅へ。
売る商品が商品だけに、皆は教育大学を卒業している設定にしたり、髪型を変えたり、ダテ眼鏡をかけたりして賢そうに見せる努力をしている。
もちろん俺もだ。
会社を出る時に所長が、
「ええか!契約書に押印してもらうまで出勤して来るなよ!何日かかってもいいから!パトカー呼ばれても怯むなよ!法的にマズい事はないんや!」
本当に軍隊だ。
しかし、1本契約を取ったら辞めようと決めていた俺は、必殺のスーパートークを考えていた。
お客様宅に着き、女子高生と母親を相手にセールストーク。
やはり教材の値段にビビッて無理っぽい…。
そこで俺のスーパートークが始まる。
内容はナイショだ。
結果あっさり契約が取れた。
さて、軍隊じみた会社をすんなり辞めるには“アレ”しか無い。
俺は夜中にこっそり会社へ行った。貰った関係書類などを全て会社のドア前に置き、関係者は全て着信拒否。
見事に飛べたが、給料も飛んだ。
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