もう10年以上前の話。
当時、池袋でアルバイトをしていた。
電話の早取りに燃える
閉店後、店で余った食材をツマミに、仲間とワイワイやって終電ギリギリで帰る。
そんな感じだから幾度となく終電を逃した。
やはり終電を逃してしまったある日。
仲のいい先輩「山ちゃん」と夜の池袋をさ迷っていると、彼がある提案をしてきた。
山「おいR(俺)、今日はテレクラ泊まってみない?安いしシャワーも付いてるし寝ようと思えば寝れるよ。それに電話取って上手くいけば女の子と遊べるし」
「山ちゃん!行く!!」
二つ返事で答える。
今や廃れたアングラ文化、テレフォンクラブ。
見知らぬ男女がピュア・アダルトな出会いを求めてパートナーを探す。
現在の出会い系サイトやSNSが担う役割を、当時はテレクラが果たしていた。
キャバクラも風俗も知らない俺がテレクラに行く。
物凄い期待とドキドキ感、得も知れぬ罪悪感を抱きつつ、山ちゃんに付いて行き『リンリンハウス』に入店。
黒ベストなスーツスタイルの店員が想像以上の愛想で応対してくる。
朝までのプランで料金を支払い(確か2、3千円)、山ちゃんと隣通しの部屋へ案内される。
室内は2.5帖くらいの縦長スペースで、簡易ベッドにテレビ、そして電話が置いてあった。
フロント付近にはレンタルビデオコーナーのような空間があって、そこから好きなビデオを借りて見ることが出来る。
そして肝心の電話だが、かかってくるコールには2パターンあった。
1つはフロントにかけてきた女性に対して、店員が俺ら(客)の簡単な容姿や年齢を伝えての照会コール。
これは店員から個別に電話がかかってきて繋いでくれるので、慌てずに受話器を取ればいい。
もう1つは完全ランダム。
全個室一斉にコールがあり、早いもの勝ちで繋がるパターン。
山ちゃんはこのランダムコールを取る技を教えてくれた。
山「いいかR、トゥルルルって鳴ってから受話器取ってたんじゃいつまで経っても話せないからな」
山「こうやって受話器はもう手に持っといて手でボタンを押して待機。鳴った瞬間に手を離す!」
「OK!わかった!やってみる」
山「でも多分俺ら若いし他のよりましだから照会コールのほうが多いと思うよ」
「そうなんだ。でも俺その早取りで話してみたい!」
山「そっかwま、頑張ってな。女の子捕まえたら俺に構わず遊んで来いよ!俺今日は寝るから」
「うんわかった!俺今日は寝ないよ山ちゃん!」
俺は言われた通りのやり方でコールを待った。
この勝負、負けてらんないぜ!
『女の子と話したい!』という気持ちよりも『早取りで勝ちたい!』と燃えていた。
繋がったのはギャル系ピンサロ嬢
『トゥルルル!』
(来た!!!!!)
パッと手を離すも既に誰かが取っていた。
遠くから
「もしもし~幾つなの~?」
という声が聞こえてくる。
(アイツか!!!キメーwwwどんだけの超反応だよwww)
『トゥルルル』
パッ!
『ツーッツーッ』
「もしもし~」
(今度はあっちかよ!!キメーwwwコイツら熟練過ぎてキメーwww)
(勝てる気がしねー…。あいつらが長電話になるまで放っておくか……)
AVを見始める俺。
『トゥルルル』
『トゥルルル…』
(??)
(誰も取らないの?)
「もしもし」
「フロントです。お繋ぎしますのでそのままお待ち下さい」
ギャル「もっしー」
「もしもーし」
ギャル「お兄さん20歳って聞いたけど何でこんな所にいんの??」
「あーでこーで終電無くなってうんたらかんたら」
ギャル「あーそうなんだ!超レアじゃん!てか今からカラオケ行こうよ!」
「いいよー行こう!ギャルは学生?」
ギャル「違う違うピンサロ嬢!今度うちの店きてよ!てかじゃぁ待ち合わせね番号教えて。西口の交番の近くで会おうよ!」
「わかった!5分くらいで行くわ」
電話を切って山ちゃんに報告。
「山ちゃん!!!!!ギャル!しかもピンサロ嬢だって!!1回目の電話で!やばくない俺?行ってくるわ!!!ありがとう山ちゃん!!」
山「おースゲーじゃん!朝9時までは何時でも帰ってこれるから気を付けて行ってこいよー」
ダッシュで店を飛び出す。
(ピンサロ嬢か~絶対エロイだろ~。ノリいいしカラオケだけじゃ終わらせねーぞー!!)
(安室とは言わない。せめてMAXくらいの子だったら最高だな!)
待ち合わせ場所に到着、教えてもらった番号にかける。
「もしもし俺!着いたよ!どこにいる?」
ギャル「え、嘘。私もいるよー。あーわかった多分!後ろ向いてみて!」
「後ろ?」
言われた通りに振り返ると、
6メートルほど先の視界に、
携帯電話片手に満面の笑みを浮かべてガンガン手を振るギャルがいた。
まるで安室ちゃん。
を金属バットで4、5回ぶっ叩いてラードと一緒に圧力鍋でじっくりコトコト煮込んだ後に墨汁を塗りたくったようなギャルが。
目の前の現実を投げ捨てて
露出過多で派手な出で立ちのギャル。
Warning!Warning!
ついさっきまでの我慢汁が冷や汗に変わり、身の危険を報せる警報が脳内で鳴り響く。
見たことの無いくらい高レベルのギャル。
俺がもしピンサロに行ってこのギャルが出てきたら、チンチンが亀頭よろしく腹部に引っ込んで出てこないレベル。
そいつがドンドン近付いてくる。満面の笑顔で。
俺も全身のチャクラをかき集めて笑顔を作る。
(どうしよ?えーーーー!!!どーーーーすんのコレ!!!)
まだ人通りの多い池袋、この突き抜けたギャルと歩くだけでも俺のチャクラは消費していく。
ギャル「カラオケで良いよね!カラ館でいい?」
「そうだな……カラ館行こう」
なんかペラペラ喋っていたが、全く覚えていない。
(どーしよ???カラオケ行ったら周りに見られないから今よりマシだけど…コレと個室に2人っきり……)
(えーーーーー!!!どーーしよ??)
そうこうしている間にカラ館のフロントに辿り着く。
コレ「とりあえず2時間?お酒飲む?」
(2時間も?10分でいいよ!酒?コイツ何考えてんだ?まさかセックス考えてんじゃねーだろな!!!!!!!!)
俺の思考はついに限界に達した。
もう何も考えられなくなった。
今そこにある危機を乗り越える有効な解決策など思いつくはずもなく、ありもしない妄想までが浮かんでくる始末。
いかに見ず知らずの人間で、こちらからは人間に見えなくとも傷付けるような事はしたくない。
そんな思いから脳内フル回転で最善策を模索していた。
その瞬間…
俺は駆けた!!!!!
3階のフロントを背にエレベーターではなく階段を2段飛ばしで駆け降りた!!!
「あー!!コラー!!逃げるな!!」
背後からは山姥の罵声が聞こえた。
(振り返るな!!)
全力で階段を駆け降り池袋の街を疾走。
息つく暇もなく走り続け、ノンストップでリンリンハウスに帰還。
その後はリンリンハウスでシャワーを浴びて電話線を引っこ抜いてひたすらAVを見ながらティッシュの山を築いて夜を明かした。
以来、俺がリンリンハウスに行くことは無かった。
もう10年以上も前、最初で最後のテレクラ体験レポート。
思えば、目の前の現実を投げ捨てて全力で逃げたのってこの時だけだわ。
以前ピンサロ好きな友人が
「スゲーのが出てきてもしゃぶられたらメッチャ気持ち良くて帰る頃には好きになってるパターンがある。だからピンサロは止められねー」
って言ってたんだけど、それ聞いた時にこの事件を思い出した。
俺もあん時逃げないで頑張って口説いてしゃぶって貰えたら好きになってたのかな?
いや、ねーな。
補足『リンリンハウス』の現状
池袋のリンリンハウスは西口・東口店ともに絶賛営業中。
ちなみに現在、早取りシステムは廃止され、全てがフロント取り次ぎ店となっている。
今では出会い系サイトやSNSがメインになっているため、テレクラは昔に比べてマトモな女性が多い。
ただし、所沢店は「ぽちゃ系」への遭遇率高し、利用時にはご注意を!
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