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精子検査と究極のアダルトビデオ

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精子検査と究極のアダルトビデオ
執筆者30代後半の男性

 ある友人が「精子の検査を受けた方がいいで」と俺に勧めてきた。

「別に普通にオナニーで射精してるしいらんわ!」

「そんな問題ちゃうねん!精子に何かあったら早期に治療した方がいいし絶対に検査は受けといた方がええで」

「検査って恥ずかしいんちゃうん?」

 友人は、自分が受けたという精子検査を回想しながら俺に話してくれた。

あのビデオはすごかったわ



 木漏れ日が差し込む、真っ白な部屋。

 物凄くリラックスできるリクライニングシートに座り、手元のリモコンのボタンを押すと、目の前に大型のTVモニターがウィーンと降りてくる。

 そのテレビから、ド迫力の大画面でハァハァ♥映像が流れたそうだ。

 そんな医療の最先端設備に囲まれながらシコシコする。

 そもそも『エロの真髄は背徳感が最も興奮のツボである』と俺は思っていて、とりわけ病院の中でオナニーするなんて、背徳感の塊ではないか。

 しかも大画面から流れるアダルトビデオが凄いらしい。

「今まで色んなAV見てきたけど、あのビデオはすごかったわ」

 目の肥えた友人の弁である。

 彼はそのビデオがあまりにも良かったらしく、後日に記憶を頼りにネットで検索したが…出てこなかったらしい。

 ってことは…市場には流通していないAVかもしれないという話になった。

「医療専門のアダルトビデオじゃないか」

 俺の周りでは実しやかにそう囁かれていた。

 あくまでも仮説であるが、精子検査でどうしても精子を採取できない人もたくさんいたと思う。

 お医者様は悩んだ。

 万人の男たちから精子を採取できるようにしなければならない。

 そこで医学界の意地とプライドをかけ、あらゆる医師たちの頭脳を集結させ、究極の「ヌケる」映像を作り上げた。

 それが、“医療専門の究極のアダルトビデオ”なのではないだろうか。

 その映像を是が非でも見たい!!

 身がよじれるほど見たい!!!

 そんなわけで、俺も精子検査を受けることにしたのである。

医者の性癖を押し付けられて



 どうせなら、その道で有名な病院がいい。

 有名であればあるほど、「抜きネタ」も究極なはずである。

 方々からあるゆる情報を仕入れ、精子検査や不妊治療で物凄く有名な病院が市内にあることを突き止め、さっそくその病院へ行ってみることにした。

 意気揚揚と病院に到着したのだが……俺は愕然とした。

 過疎地にポツンと立てられた、ボロボロの民家のような病院。

 あまりにもイメージと違うではないか。

 こんな病院で、医学の頭脳を集めて作られた究極のAVを見ることができるんだろうか…。

 不安になりながらも検査を受けにきた旨を伝える。

 診察室に入ると、牛乳瓶の底のような眼鏡をかけた白髪のジジイ(医者)が俺に紙コップを手渡し、

「さぁ、抜いてこい!」

と言わんばかりに『ポン!』と俺のお尻を叩いた。

(紙コップに精子を入れるってことか…)

 妙に色っぽい看護師さんに部屋を案内される。

 もうね、俺の聞いてた話と全然違うの。

 真っ白な部屋 → 取調室みたいな暗い部屋。

 大きなリクライニングシート → 中華料理屋のカウンターにあるような丸椅子。

 ティッシュは1箱あったが、TVは1台も無い。

 ふと目線を落とすと、カラーBOXにエロ本が無造作に並べられている。

「これで抜けってことか…」

 紙コップを片手に、しばしボー然と立ち尽くす俺。

 どれくらい立ち尽くしていたんだろう。

 ハッと我に返った。

「とりあえず抜かんとな」

 オカズを探すために、カラーボックスに手を伸ばす。

(なんだこりゃぁ、官能小説ばっか……)

 小説を読みながらオナニーできるほど、俺の右脳は発達していない。

 小説以外のエロ本を手に取るが、もうエロのテイストが古い古い!

 エロ本と言うより、「ビニ本」と言った方がいいくらい、モデルの髪形から化粧までが一昔前の感じである。

 なんかページもひっついてるし、汚くて仕方がない。

 百歩譲って古いのはいいとしても…





ジャンルの8割がSMプレイなのだ。





 亀甲縛りされてる苦しそうな女を見ても、チンコはびくともしない。

 完全に白髪ジジイの性趣向を患者に押し付けている感覚。

 抜き部屋に案内されて1時間あまり、紙コップ片手に時間だけが無情に過ぎていく…。

あの…絶対に先生には内緒で…



 唯一の救いが、照れくさそうに部屋をノックして「どうですか?」と聞きに来る色気のある看護師さん。

「ああ…すいません、もうちょいです…」と焦る俺。

 しかし、どうすることもできずにボー然と時間が過ぎる。

 20分くらい経過して看護師さんが、また「どうですか?」とドアの外から声をかけてくれる。

「どないもこないも…あきまへん!」

と正直に泣きつく俺。

「あの…中に入ってもいいですか?」

と看護師さん。

「えええ!!!」

 ちょっと戸惑ってテンパる俺。

「先生に手伝って来いって言われて…あの、どうすればいいですか?」

「えええ!!ちょとマジですか??」

「一応、医療行為の一環なんで……手でしごくだけになるんですが」

 看護師さんは、半立ちの俺のチンコを握りしめて、恥ずかしそうに上下にゆっくりしごき始めた。

 それでも緊張のせいか、チンコはまったく反応しない。

 看護師さんはちょっと焦った表情になり、

「あの…絶対に先生には内緒で…」

と俺のチンコを小さい口の中に含んでくれた。










…っていう妄想でようやく紙コップの中に射精した。










 結局俺は小説やエロ本を一切使わずに、看護師を想像しながら自力で抜いてやった。

 ジジイは顕微鏡で俺の精子を覗いている。

 ジジイに抜きたての精子をまじまじと見られるシチュエーションってのもちょっと変な感じである。

 ジジイは顕微鏡を覗きながら「カカカカカカ!」と黄門様のような高笑いをして、指でベリーグッドの形を作った。

 病院は問題だらけだが、精子は無問題だったのでなんだかホッとした。

 結局、医者の頭脳が集結された究極のアダルトビデオは見ることはできなかったが、オナニーにおける「オカズ」のありがたさは思いっきり感じることができたのであった。

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