読者投稿40代後半の女性
「ひろしまドリミネーション」が始まった。
平和大通りをイルミネーションで彩るイベントで、毎年たくさんの人が集まる。
ということは、渋滞が酷くなる。ただでさえ車の多い平和大通りが、もっと渋滞するかと思うと、血の気が引く思いがした。
今までは指名の受付を17時までにしていたが、16時半に引き上げた。
間違いなく渋滞に巻き込まれて、お腹が痛くなるのが目に見えていたからだ。
お店にも受付終了時間の引き上げを伝え、写メ日記やTwitterでも告知する。気が咎めたが、自分を守るためと割り切った。
割り切ったつもりだったが、勤務時間を縮小することで、仕事量が減ることへの懸念が強くなっていった。
どうにかしてイカせなければ
写メ日記から始まり、SNSでもやり取りをしているお客さんから指名を頂いた。
なかなかお客さんの都合がつかなくて、やっと仕事が落ち着いて会えることになった。
ホテル派遣ではなく、駅で待ち合わせ。JR西条駅での待ち合わせとなった。
のんびりひとり旅の時間。
車窓に流れる景色は、若い頃に見ていたものと少し違っていたような気がした。
西条に行ったことを思い出しながら、それでも思い出すことをほろ苦く感じてもいた。
無事駅で合流。
感傷を胸に抱えながら、ホテルに向かった。
お店にホテルの名前と部屋番号を伝え、プレイに入る。
今回も、いつもと同じようにつつがなく終わると思っていた。
が、私は次第に焦りの色を隠せなくなっていた。
効かない。
フェラでイッてくれない。
こんなことは初めてだった。みんなフェラでイッてくれていた。
どうやってもイッてもらえない。仕方なく手コキに移るが、これでもダメ。私はかなり焦った。
中折れするわけでもない。それなのにイカない。どうしていいのかわからなくなった。
次第に私は無言になり、ローションの擦れる音だけが響いた。
(どうにかしてイカせなければ)
それしか考えられなかった。
しかし、時間になってもお客さんはイケなかった。
敗北を感じた。何もできないなんて。がっくり肩を落としてお店に戻った。
(私ダメなのかな)
そればかり考えていた。
夜に出ればいいのに
あの「お知らせ」は、じわじわと私を苦しめていた。
見た目が重要なのだ。
頑張りを見てもらえても、「見た目がよくない」と言われてしまえばそれまで。待機所でもその話が聞こえることがあった。
とりあえずは目元をはっきりさせようと、ジェルタイプのアイライナーを買った。これなら涙目の私でも滲まないと聞いたから。
でも実際に使ってみると滲む。やっぱり一重でラインが見えない。デカ目効果を狙おうにも狙えない。ブラウンのシャドウは顔がキツく見えてしまう。
(どうしたらいいんだ…)
毎日そればかり考えた。
メイク本も買ってみた。でもどれも二重前提で、一重には使えなかった。
どうしてこんな顔なんだろう。
風俗に飛び込んだ自分の無謀さを呪った。
自分がどの位置にいるのかを確かめる女の子も出始めた。私も気になりつつも、聞くのは怖かった。
下位についているのが目に見えてるから。
(いくら指名されてもリピートがない、見た目で判断されるなら私のランクは低い)
そう思っていた。
そんな中でも、他店のフリーで食いつなぐ日々が続いた。ただ不景気のせいなのか、待機所全体にコールが鳴ることは少なく、お客さんが付かない日もまた出てきた。
(私何やってるんだろう。写メ日記も頑張ってるのに。やっぱり夜に入らないとダメなんだろうか)
子供がいることと、通勤手段が公共交通しかないことを理由にお昼だけにしていたが、夜も入ることを考え始めた。
お昼はお客さんが少ない、活発化するのは夜。
そう聞いて、思い切って朝晩両方入ってみることにした。
帰りはタクシーを使うと1日の収入が飛んでしまうので、最終バスに間に合うよう23時までの受付にしてもらった。
子供たちには申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、こうでもしないとお客さんや指名は取れない。そう思っていた。
写メ日記やtwitterにも朝晩出勤することを書いてアピールした。
『今まで日中だけだったから、夜しか呼べない方は今日は大丈夫です』
よく「夜に出ればいいのに」とスタッフに言われていたから、期待していた。
いつもなら帰る時間の17時を過ぎる。ここからが勝負だと思った。
18時過ぎに晩ご飯を食べ、コールに備える。
しかし、全く電話が鳴らない。他のブースは鳴っているのに。
それに思ったほどコールもない。本当に夜って稼げるのだろうか。
スタッフに聞くと、夜中が本番らしい。
夜中に出勤できる「人妻」ってどうなんだろう。
夜専門の女の子、それって本当の人妻は働けるんだろうか。ご主人公認の場合は別として、わかる人にはわかるんじゃないだろうか。
結局、夜のコールはなかった。
私は夜中出勤はできない。
『やっぱり昼専門で頑張ろう』と思いながら、23時でお店を後にした。
最終話MAILER-DAEMON
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