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【私は人妻デリヘル嬢】第10話.消えた亜衣ちゃん、再会したお客さん

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【私は人妻デリヘル嬢】第10話.消えた亜衣ちゃん、再会したお客さん
シリーズ物【私は人妻デリヘル嬢】

読者投稿40代後半の女性

 女が3人寄ると「姦しい(かしましい)」と書く…そうでなくとも、移動中の車内は賑やかだ。

「ねえねえ亜依知ってる?」

 ふいに最近話すようになった女の子から聞かれた。
 同じ『人妻の花園』に所属する亜依ちゃんのことだった。

「なんかさぁ、あの子臭くない?ちゃんとお風呂入ってんのかな」

(こういう陰口嫌だな…あまり乗りたくない)

「顔は知ってるけど、一度しか送迎で一緒になったことないから気づかなかったよ」

 本当は待機所でも何度か話したことがあるのだけど。

「彼女専用の座布団あるんだよね…ねえクロちゃん」

「ああ、あれねぇ…」

 何のことだかさっぱりわからない。
 きょとんとしていると、クロちゃんが説明してくれた。

 以前亜依ちゃんが乗車した時に、座布団がお漏らしをしたみたいに濡れていたのだという。
 それ以来、クロちゃんは彼女用に座布団を用意しているそうだ。

 クロちゃんの対応は仕方ないとして…私も何か言われてるのかな。

「そういえばスカートのお尻のところが、色が変わるくらい濡れてたこともあったよねぇ。絶対あれ性病持ってるよね」

「それってヤバいんじゃ…ちゃんと治療した方がいいのに」

 その時は気づかなかったけれど、もしかすると亜依ちゃんは本番をしていたのかもしれない。
 私にタクシー代を借りに来たこともあったから、病院代も捻出できなかったのだろう。

「なんかホストクラブにも行ってるらしいね、男にお金貢いでるんじゃない?」

 居たたまれない気持ちになった。
 ホスクラとは全く無縁な私だけど、他人のことをとやかく言うのはどうなんだろう…。

 それからしばらくすると、亜依ちゃんの姿を見かけなくなった。
 それとなくクロちゃんに聞くと辞めたらしい。何があったのかは知らないが、妙に気になった。

ガチンコ体験レポート
PCMAX(レポート風)


掛け持ちしてるの?



 ゆったりとした時間が流れる。待機所に置かれた80円の缶ジュースを飲みながら、写メ日記に寄せられたメールにお返事をする。

 ギニュー戦隊やサイコパスの他に、「いつか指名したい」とメールをして下さるお客さんがいるのも嬉しかった。お互いのアドレスはわからないしお金も要らない。気軽にやり取りできるツールだった。

 お返事をしていると、ブースの電話が鳴った。

「千秋さんお仕事ですぅ」

「ありがとうございます」

 今日はB系ドライバーさんの運転だ。

「千秋ですよろしくお願いします」

「千秋さんデリランドフリー40分、ホテルトマト203ね」

 いつものことながら、緊張で顔が引きつる。部屋のドアの前に立った瞬間から、闘いは始まる。
気に入ってもらえるかもらえないか。それは一瞬で決まるのだ。

 ホテルトマトの前に車が止まる。

「行ってきます!」

 不安を抱えながら、私は203号室へと向かった。

 いつまで経っても慣れない瞬間。深呼吸をしてドアを叩く。

「お待たせしましたデリランドですぅ」

「どうぞ」

(よかった。チェンジはなさそう)

 でも油断はできない。デリヘルを呼んだことをバレるのが嫌で、取り急ぎ部屋に入れてからチェンジを通告するパターンもあるからだ。時間交渉をして料金を頂けるまでは安心できない。

 無事交渉も成立、お金を頂いてプレイ開始。
 歯磨きうがいをして頂き、シャワーへ。つつがなく進む。
 ベッドに入った時、お客さんから驚くことを言われた。

「以前にも会ったね。掛け持ちしてるの?」

 私は焦った。必死で記憶を辿った。ザ・デリソーで接客した、迷惑メールに困っていたお客さんだった。
「掛け持ちしてるの?」は想定外。同じ経営者とも言えず、仕方なく「掛け持ちなんですぅ」と答えるしかなかった。幸いそれ以上は追及してこない、いいお客さんだった。

 本番も強要しないし、「30代が話しやすい」と言ってくれる。『指名してくれたらいいのになぁ』とこっそり思ってた。ザ・デリソーやデリランドの所属ではないから、そもそも私を指名できるのかはわからないけれど。
『また呼んでもらえたらいいのにな』とお別れした。

 お店に戻り、スタッフのお兄さんに聞いた。

「違うお店で接客したお客さんに当たって、掛け持ちしてるのか聞かれたんですが、この場合どうすればいいでしょうか?」

 スタッフは焦っていた。
 本来、一度接客したお客さんには、再度フリーで付かないように電話番号で管理しているらしい。
 今回はラブホの電話からかけてきたから分からなかったのだろう、という話になった。
 指名はしないというあのお客さん。フリーで再会する夢は潰えた。

第11話暗雲立ち込める4日間

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