シリーズ物【私は人妻デリヘル嬢】
読者投稿40代後半の女性
朝が来た。
またメイクをして9時の電車に乗り出勤する。
今日は約30分かかる乗車時間を利用して、電車内で写メ日記を更新することにした。
デコメが使えるとのことなので、デコメを駆使して可愛く仕上げた。
内容は今日の勤務時間のお知らせ。
(もし指名してくれる人がいてくれたら…)
そんな淡い期待も抱いてupした。
いつものように電車と路面電車を乗り継いでお店に着く。
お昼は前もってコンビニで買っておいた。通勤路に大好きなセブンがあるから助かる。
事務所に出向き13番のブースを確保すると、写メ日記をチェックする。
まだコメントは入っていないけれど、『そのうち入ってくるはず』と焦らないことにした。
写メ日記は、お店の女の子全員が書いてるわけではなかった。ほんの一部だけだ。
だから私はそれを取っ掛かりにしようと考えた。いつかきっと実を結ぶと信じて。
今日もなかなかブースの電話は鳴らなかった。
私だけではない。全体的に鳴らないのだ。
(やっぱり不景気だからなんかな…)
おとなしくネットをしながらコールを待った。
突然、ブースの電話で起こされた。
いつの間にかソファーでうとうとしてしまったらしい。
バッグを持って出ると、今日もクロちゃんがドライバーだった。
今回もまた系列店のフリー。ドキドキしながらホテルに向かう。
(ここのホテルは確かオートロックだったはず…)
恥を忍んでフロントに「503号室に行きます」と声をかけ、鍵を開けてもらう。
ドアをノックし「お待たせしました」と言うと、お客さんは冷たく「チェンジ」と言い放ち、拒絶するようにドアを閉めようとした。
「あのすみません…チェンジ2,000円かかるんですが…」
お客さんは嫌そうにドア越しにお金を渡すと、さっさとドアを閉めた。
何もかもを否定されたような気分になった。
肩を落とし、事務所にチェンジになった旨を伝えて、クロちゃんが待つ車に乗った。
情けなくて悔しくて、言葉が出なかった。
(私がブスだから、太ってるから、年いってるから…。昔もテレクラですっぽかしいっぱい食らったなぁ…でもお仕事だから余計に悔しい。悲しい)
そんな私を、クロちゃんは「よくあることですよ」と慰めてくれた。涙でマスカラが滲んだ。
ブースに戻り、パンダ目になったメイクを直し、遅いお昼を食べた。
待機所にはレンジがあるから助かる。
それにしても…クロちゃんは「誰にでもよくある」と言ってたけど、にわかには信じがたい。
だって、若くてスリムで可愛い子が沢山いるのに…。
この時私は、クロちゃんの発言の真意に気づいていなかった。
またブースの電話が鳴るのを待つが、聞こえるのは女の子のおしゃべりの声ばかり。
たまによそで電話が鳴っても、誰かが出て行く気配はない。
17時になった。思わずため息が漏れた。
お仕事用のバッグを返却するために事務所に行く。
足取りが重い。どんな顔して行けばいいのか…。
「お疲れ様です」
バッグを戻し、「明日も同じ時間に出勤します…」と消え入りそうな声で言うと、早々に事務所を後にした。
私は敗北者だ。役に立たない。
お給料ゼロ。絶望を感じながら、夜からの飲み屋さんの仕事に向かった。
第5話40代女の需要
【私は人妻デリヘル嬢】第4話.鳴らない電話
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