
これは俺と嫁の話である。
俺は社会人になってから元キャバ嬢と同棲をしていたが、2年程で破局した。6月の事だった。
(しばらく彼女出来ないだろうな)
そう思いつつも、今年の夏休みに海でゲットすると誓っていた。
夏休みに入る時に職場の先輩達に宣言する。
俺「夏期休暇で彼女ゲットしてきます!」
ビーチボール持ってくれば良かったね~
友達と海に行く約束をして、「いつもの海じゃあつまらないから綺麗な海に行こうぜ」と言った。
友達「じゃあ場所選んでおいて」
返信があった。
ネットで調べると、凄く綺麗な穴場スポットの海を見つけた。
俺「ちょっと遠いけど、ここに行こう」
当日、友達5人とその海に行った。
カンカン照りのまさに夏って感じの天気だった。
ビーチに行く。
失敗した…海はメチャクチャ綺麗だが女がいない!
口コミしか情報が無い穴場スポットは穴場過ぎた。
俺達は諦めて海を楽しむことにした。
ビーチボールを持って来ていたが、男5人でビーチボールをするのは面白くない。
一方、海は澄み渡っていて最高だった。
ほとんどは砂浜だが、満潮・干潮を利用する岩の生け簀みたいな所があり、その上から飛び込みをしまくっていた。
生け簀で遊んで砂浜に帰ってくると女グループが3組いる!
普段の海なら数十組いるのだが、穴場スポットでの3組は嬉しかった。
友達とナンパしようと相談し、まずは少数精鋭で行くことにした。
最初はギャル2人組だ。
俺はギャルに興味が無かったので、他の2組を監視していた。
そこに俺のど真ん中タイプがいた。
彼女は3人組で社会人になりたての雰囲気だった。3人とも可愛い。
彼女達はビーチに座って雑談していた。
その雑談の中で、
『ビーチボール持ってくれば良かったね~』
そんなジェスチャーをしていたのを俺は見逃さなかった。
(フフ、俺はビーチボールを持っている)
友達「ダメだった、ほぼシカト」
友達2人が帰ってくる。
俺「あのグループいけそうだよ、ビーチボールやりたがってる」
友達「まじで?なんで?」
俺「ボール持ってないのに、こうやってトスするようなジェスチャーしてた」
友達「よし、じゃあ次いってみるか」
友達「ナンパなんですけどいいですか~?」
女「なにそれー直球過ぎるでしょ(笑)」
第一感触はいい感じだ。今回は俺を含めた3人で挑戦した。
俺「ビーチバレーしようぜ」
女「ほんとに?ビーチボール持ってくれば良かったって話してたの」
(知ってる)
俺達6人はビーチボールで遊びながら自己紹介をした。
途中から待機していた2人が合流する。
その後も砂浜に埋めたり、海ではしゃいだりして遊んだ。
雰囲気悪くて申し訳ないが、俺と付き合ってくれないか?
帰る時に番号を交換することになった。
俺達は代表の1人がアドレスを交換して、そこから皆に伝える方法を取った。
アドレスを交換したのは俺と嫁だった。
理由は簡単なものだった。
キャリアが一緒で、電話番号だけでメールが送れるからだ。
俺は帰りの車中でメールをしていた。
俺「友達1と友達2が○○ちゃんのメアド知りたいって言うから教えてくれる?」
嫁「わかった~○○だよ」
俺「嫁ちゃんは誰か知りたい人いる?」
嫁「うーん、私はいないかな~」
嫁は終始ノリが悪かった。後で理由を聞くとナンパが苦手だったらしい。
友達に付き合い仕方なくといった感じだ。
俺と嫁はメールを繰り返した。
なんとか夏期休暇中に映画に行けることになった。
当日映画を見て、居酒屋に行く。
俺「ナンパした時は無愛想だったけど、本当は明るいんだね」
嫁「だってナンパは苦手なんだもん」
俺「最初見た時からタイプで絶対声かけようと思ってたからね。だからビーチボールしたいのも知ってた」
嫁「あ、知ってたんだ?ずるい!タイプって○○のこと?」
俺「いや、嫁ちゃんだよ」
嫁「嘘、○○だとずっと思ってた。よく話しかけてたからさ」
俺「○○ちゃんはノリいいじゃん?盛り上げるにはノリのいい子に話しかけないといけないからな」
俺達はいい感じに打ち解けていた。
嫁「私もあの中では俺さんが一番カッコイイと思ってたよ」
俺「マジで!?超嬉しいわ」
俺「居酒屋で雰囲気悪くて申し訳ないが、俺と付き合ってくれないか?」
嫁「本当に?」
俺「本当に」
嫁「うーん、俺さんいい人だし、わかった、付き合おう!」
俺は最近起きた自分の出来事に気付いた。
俺「ありがとう!超嬉しいわ!でも1つ言っておかないといけないことがあるのを思い出した」
嫁「なに?」
俺「俺、ついこないだ難病になっちゃったんだ」
嫁「えっ…?」
これは、会社の健康診断の結果が『精密検査が必要』となっていて、大きな病院で再検査して発覚したものである。
俺「ごめん、付き合う前に言えば良かったね」
嫁「どんな病気なの?」
俺「医者曰く、○○って難病で発症してから3年で8割の人が治るらしい」
嫁は泣き出した。
俺「えっ!えっ!どうした?」
俺は嫁が落ち着くまで待った。
嫁「ヒック…だって3年で8割の人が亡くなるんでしょ?そんなのひどいよ」
居酒屋がうるさくて聞こえてなかったみたいだ。
俺「いやいや、8割の人がな・お・る!」
嫁「えっ?じゃあ残りの2割は?」
俺「長引く」
嫁「それだけ?」
俺の難病は治療法が見つからないだけで、実害は息切れ位だった。
俺は泣いてくれた嫁を大切にしていこうと心に誓った。
嫁との出会いは運命だと思っていた。
出会ったあの時、あの海水浴場を選んだのは、たまたま同じ口コミを見て嫁が決めたからだ。
嫁は俺の趣味のゲームにも寛大で、バイオやモンハン等を一緒にやっている。
外見は俺好みのどストライクだった。
そして一番運命だと感じたのは、過去に俺をいじめていた女と漢字は違えど同じ名前だったこと。
俺は明日提出する婚姻届を見てつぶやいた。
「あいつのことは許してやるか」
最後に
本当にこれで終わりです。
今まで読んでくれてありがとうございました。
俺も昔のことを思い出せて、楽しかった。
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