
時代的には初めて入った会社の上司、かおりの後の話だ。
かおりがいたからと言っても、最初に入った会社は十分ブラック企業だった。
仕事は基本的に下請けの下請けだ。
客や元請けから罵声が多かった。
新人の頃は「こんな知識もないのかよ、氏ね」とか「新人だからって教えてる暇ないんだよ、仕事場で勉強するなら邪魔だから帰れ」等色々と言われたりした。
俺は必死に勉強をした、学生時代より勉強してたと思う。
仕事から帰ってきて、朝まで勉強して仕事に行く日もたまにあった。
残業代はみなし残業だった、それ以上は出ない。
他の新人はどんどん辞めていく。同期は15人程いたが、残ったのは俺を含めて3人だった。
そんな会社に勤めていた。
キャバ嬢の子狙ってたんだけど落とせなくてさ
ある程度スキルが付いた頃だった。
友達からメールが来た。
友達F「今って彼女いる?」
俺「久しぶり、どうした?今はいないよ」
友達F「いやさ、キャバ嬢の子狙ってたんだけど落とせなくてさ、彼女自身は彼氏欲しいみたいで男を紹介してって頼まれちゃって」
俺「ほ~可愛いの?」
友達F「超絶可愛い」
俺「そんなに可愛いなら諦めないで落とさなくていいのか?」
友達F「いや、メールも結局営業メールばかりだし、金使うばかりだから諦めるのよ。他の知らないやつに取られるよりは俺が付き合ってくれた方がいいし」
俺「お前が無理なんだから、俺が付き合うのは厳しいだろ」
友達F「店誘われたら断っていいから」
俺はメールをすることにした。
名前はあきと言う、メールはキャバ嬢だけあって慣れている感じだった。
俺は出来る限り店の話に触れないことにした。
あきは地方から出てきた専門学生だった。
部屋は1人で住んでるのに2DK、俺は1人で1R7畳だ。
それも部屋の中にキッチンがあるから、実質5.5畳位だった。
俺の薄給ではこれが限界だ。
思ってた以上に性格がいい子で、メールもいい感じに進んでいった。
そして俺達はデートすることにした。
お互いに写メは送らず、待ち合わせ場所で初めての顔合わせだった。
待ち合わせ場所で待つ。そこは皆がよく使う待ち合わせ場所で、人がいっぱい溢れてる。
服装は聞いてるので周りを見渡す。
それっぽい女の子がいた、キャバ嬢っぽい。超絶可愛いな。
あの子かなと思って話しかけようとした時、彼女は動き出して他の男と喋り始めた。
(なんだ違う人か)
俺はこんな服装で待ち合わせ場所に着いたとメールを送る。
メールを送り終わった後に周りを見渡すと、先ほどの女の子がまた1人でいた。
彼女は携帯を見て周りを見渡し、俺に近づいてきた。
あき「俺さんですか?」
俺「え?あき?あれ?さっき違う人と喋ってなかった?」
あき「そうなの~聞いて!待ってたらあの人がめっちゃ見てくるから俺さんかな~って話しかけたら人違いだったの!恥ずかしかった!」
俺「気に入られたんじゃない?あの人も話しかけられてビックリしたと思うよ(笑)」
俺達はデートしたが、遊びもご飯もそこまで高くない店だ。
(普段なら同伴前やアフターで、もっと高い店に連れてってもらってるんだろうな)
そう思うと申し訳なかった。
もしかしたら付き合うかもしれないじゃん?
ご飯の時だった。
あき「いっぱい食べるね、よく太らないね」
俺「代謝がいいみたい」
あき「友達から聞いてる?私がキャバ嬢だって。だから太れないんだよ、羨ましい」
俺「あぁ、聞いてるよ」
(ヤバイかな、これから同伴誘われたらどうしよう。新規は安いって聞くから1回だけ勉強として行くか)
あき「今日は休みだから久しぶりにプライベートを楽しめてるよ!ありがとう!」
俺「あ、今日は休みなの?」
俺はホッとした。
あき「私、今年専門卒業なのね。だから徐々にフェードアウトしていくつもりで最近は出勤日数少なめなの」
俺「でも人気あるでしょ?お客さんは悲しんでない?」
あき「卒業したら実家に帰って今の専門の仕事に就きたいからさ。それにうちのキャバ変わってるし、そこまでお客さんいないの」
聞くとテレビ画面にずっとアニメが流れてるキャバらしい。
確かに変わってる。
俺達は飯を食べた後に夜景を見に行った。
カップルがいっぱいいる場所だ。
そこには夜景がよく見える展望台があった。
展望台のフェンスにはおびただしい数の南京錠が付いている。
南京錠にはカップルの名前が書いてあり、『ずっと繋がっていられるように』との願いがあるそうだ。
あき「すごいね、これ」
俺「ここまであると南京錠の方が重そうだな、あの南京錠なんて門を閉める用のやつだぞ(笑)」
あき「本当だ、めっちゃ大きいね!私達も持ってくれば良かったね」
俺はドキッとした。
俺「こうゆうのは付き合ったカップルが付けるもんだろ(笑)」
あき「もしかしたら付き合うかもしれないじゃん?その時のために事前に付けておくの」
俺「このフェンス南京錠売るために定期的に撤去されてるぞ(笑)」
あき「逆に別れちゃいそうだね(笑)」
俺達は笑いながらそんな会話をした。
その日は何もしないで帰ったが、しばらくしてあきから告白された。
俺は迷うことなくオッケーした。
お気に入りのキャバ嬢を紹介してくれた友達に報告するのは気が引けたが、報告しないわけにはいかない。
俺「あきと付き合うことになった」
友達F「マジで!?どうやって落としたの?」
俺「デートしてメールしてたら付き合うことになった」
友達F「さすがだな!俺が付き合ってくれて良かったよ!よろしくな!」
俺「おう、ありがとうね」
転職して、給料も上がったから一緒に住まないか?
付き合ってからのデートはお互いの家に遊びに行くことが多かった。
あきの家は広くて、片方の部屋は倉庫として使われていた。
時は少し経ち、彼女は専門学校を卒業し、実家に帰って就職した。
キャバ嬢はその時に辞めた。
それでもあきはキャバで貯めた貯金を使い、週末に新幹線で俺の家に来ていた。
俺も薄給なりにあきの地元に遊びに行っていた。
一方、俺の仕事は転機を迎えていた。
俺はいつか会社を起こしたいと思っていた。
コネを作るため、会社間の集まりや飲み会には積極的に参加していた。
ずっと勉強をしていたため、同年代より専門的知識はあると自負していた。
それを嫌味なくプレゼンすればいいだけだった。
「うちの会社に来ないか?」というありがたい言葉も何社か貰っていた。
待遇が良く、役職も付ける約束をしてくれた会社に転職することとなった。
その際に前の会社とのいざこざがあり、スムーズとは言えないが転職することが出来た。
給料もかなり上がった。
俺「転職して、給料も上がったから一緒に住まないか?毎週こっちに来るのも大変だろ」
あき「本当に?行きたいけど仕事辞められるかな」
俺「こっちに来てゆっくり探しなよ」
あきは会社を辞めて俺の家に来た。
引っ越しは後でしようと考え、5.5畳の部屋での同棲がスタートした。
あきは毎日俺の弁当を作ってくれた。
狭い部屋だが、2人でお風呂に入ったり、家に帰ったらご飯がある生活は幸せだった。
1年経った頃だろうか。
あきの中での俺が、恋人感覚から家族感覚に変わってきた。
そこから意見の不一致、すれ違いが多くなってきた。
お互いに不満があっても喧嘩までは発展しなかった。
それがいけなかった。
付き合って2年経ちそうな頃、お互いの積もり積もった不満が爆発した。
それは修復不可能と思えるほどの喧嘩だった。
あきは家を飛び出した。
しばらくしてあきを探しに行くが見つからない。
やっと電話が繋がり、会って話をすることになった。
あき「もう、私達が元に戻るのは無理だと思う」
俺「そうかもな」
そう思えるほどの喧嘩だった。
あき「もう別れよう」
俺達の同棲は2年経たずに終わった。
あきは近くのアパートを借りた。
アパートへの引っ越しは手伝った。
俺の家からあきの物が無くなっていくのは寂しかった。
お互いカラオケが好きだった。
別れて1ヶ月した頃、あきにカラオケに誘われ行ったが復縁することは無かった。
現在、彼女は結婚している。
あの喧嘩が無かったら、別の生活があったのかもしれない。
第21話「先輩」と呼ばせ続けたJC
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