飽くなき出会い系の探求者、友人R。
主な狩場はLINE掲示板、彼はそこで女の子を喰い散らかしている。
そんなRから、つい先ほどLINEでメッセを貰った。
「ローションこわい」
たったこれだけだ。
何のことだかサッパリ分からない。
気になったので返信してみる。
R「忙しいだろうから、前フリだけしといた」
俺「よけい気になるわwwwどうしたのよ」
事情を聞かないわけにはいくまい。
Rは雪国の青森市在住、そこは俺の地元でもある。
普段は働き人の彼だが、急遽2日間の休みが与えられた。
当然のごとく、Rは初日からLINE掲示板で女の子を探した。
すでに定期の子(定期的に会える女の子)は数人いるのだが、彼はリスクを犯してでも、常に新たな出会いを望むのだ。
この精神は見習うべきものがある。
そしてRが目を付けたのは、某LINE掲示板の書き込みだった。
写真:無し
名前:くう(ハンネ)
身長:160cm
体型:グラマー
タイプ:癒し系
こんな女の子をチョイスし、ホテルで会う約束を取り付けたという(援交ではない)。
俺の経験からすれば、『グラマー+癒し系』はかなり危険な組み合わせ。
ある友人いわく、「デブだけど優しいよっ♪」と言っているに等しいそうだ。
実に的を射ている、その例えは的確だと感じた。
だが、Rは積み上げてきた経験から、強靭なメンタルを身に付けていた。
今までに地雷ばかりを踏んできたため、『あいつよりマシ』と思えば怖いものは無いのである。
さらに今回、Rには野望があった。
彼はまだ、ローションを使ったことがなかった。
どうしても、一度試してみたい。
湧き上がる好奇心が、彼の背中を押した。
ローションは、ホテルの浴室に用意されていることが多い。
万が一を考え、Rは自分で用意した物を携えて、意気揚々とホテルで待機していた。
ホテルの部屋には、階段状に高くした三段ほどの床の上に、ハート型のジャグジーがあった。
ピンクにライトアップされたハート型のジャグジーの中にローションを入れ、ローション風呂にして楽しみたい…。
Rの胸は躍った。
彼はまんまるで可愛いデブを「トトロ」、上背がありゴツいデブを「トド」と呼び分けていた。
(「トトロ」ならいい)
そしてやって来た『くう』は、見事な「トド」だった。
「ちゃんとくびれてますよぉ」
明るく言うのは可愛い…が、背中と肩周り、でん部と大腿部の贅肉が素晴らしい。
結果として腰の周りが細く見える、“自覚なきグラマー”だった。
「ローション風呂やってみたいんだけど…いい!?」
くうは、Rの申し出を快くOKしてくれた。
ジャグジー目指して階段床を登る姿が、「シーパラダイスで見たトドのダイビングショーそのままだった」と言う。
Rも後を追ったが、ジャグジーはくうで一杯、彼の入る隙間は無い。
それでも、かろうじて両足を入れることができた。
しばらくの間、トロトロになったお湯をくうにかけたり、彼女を触ったりしていたものの、Rの心は高まらない。
(こんなものじゃないはずだ)
「じゃあ、今度はRさんが入ろう」
なぜか順番制になっていた。
くうが、斜めに身体を持ち上げながら、片足を床に乗せ、もう片足を引っ張り上げた瞬間…そのまま階段床をデロデロとすべり落ちていった。
『ヌモッ!』
聞いたこともない、重く粘ついた音を立てながら、くうが湯上りのドアにぶつかった。
(こんなにすべるのか)
Rは大きなショックを受けた。
幸い、くうに怪我はなく、Rがシャワーで洗い流してやり、「今度は俺がやってみる」と言いながら、ジャグジーに入り、わざと階段床を滑り降りて、笑い話でまとめた。
こういう優しさは、俺がRを尊敬する所以だ。
しかし、Rが期待していた快感は得られず、ローションは彼に“滑ってこわい”という印象だけを残した。
そして帰りがけ。
「あ、お風呂場にローション置いてあるじゃん!持って帰ろうっと」
くうはほがらかに宣言して、いそいそとバッグに詰め込んだという。
R「ジャグジーに自前のローション流し込んでるときはさ、まさかこのあと、『トド』が滑り落ちることになるなんて、思ってないからさあー」
R「今度は、普通に平面のところにするわ」
そう言った。
俺「滑ったお前に怪我はなかったのか?」
彼は右の肘をすりむき、右足の親指の爪が縦に割れ、はずみで舌を噛んで血が出たという。
俺「けっこうな怪我じゃんかwww」
R「な?ローションってこわいだろ?」
それは、ローションのせいではない。
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