【出典：Leo Hidalgo (@yompyz)】

ライターホンダ

　世間は夏休み。
　鮮やかな極彩色が際立つ開放的な季節。

　某日12：30、渋谷。
　浮かれたパリピ・若者・学生たちがうろつく中、１人筆者は煙草を燻（くゆ）らせていた。
　そう、これからTwitterでやり取りをした女の子と会うために…。

「明日、渋谷で会ってくれる人いませんか？」現代の闇を覗く旅

　疲れた体で夕食のラーメンをすすり終えた、水曜日の21:00。
　本来なら翌日も仕事だが、久しぶりに有給休暇が取れることになった。
　明日は朝から惰眠しようか…と思いながらも、『こんな時こそアクティブに動こう！』と考えた筆者は、早速スマホを手に取り、明日の予定の思案を開始した。

　さすがに友人たちはみな仕事だ。昼から飲みにでも行きたいがそれは難しい。
　１人で映画を観に行くか？日帰り旅行に行こうか？温泉に浸かるのも悪くない。
　それとも早朝ソープに行こうか？昼キャバもやってるかな？

　…何だかどれもしっくりこない。今は１年で最も躍動感溢れるシーズンだ。
　無性に誰かと会いたくなった。求めている。精神と身体が、新しい出会いと経験を。

　そう思いながら、ボーッとTwitterを眺めていた時だ。
　以前にチャレンジを行った際のゾンビアカウントのTL（タイムライン）に、業者なのか本物の女の子なのか見分けの付かない呟きが流れてきた。
Checkホンダ氏のTwitterルポ
・可愛いコには会えるのか！？Twitter上に巣くう、“援交募集アカウント”の実態に迫る！
・【Twitterリベンジ】「齋藤飛鳥」似の援交娘にアポを取り付けた結果、“メンヘラボストロール”があらわれた！ｗｗｗｗｗ

　アカウント名は「ゆりえ」。



　彼女（？）はデート援、つまり「パパ活（肉体関係を持たずに、デートのみで経済的支援をする男性を探す活動）」目的だった。
　…筆者の手が止まる。

（いやいや、忘れたのか？）
（あれだけ痛い目に遭っただろ？もうコリゴリだろ？）
（業者かボストロールが出て来るに決まってるぞ？）

　…援助交際アカウントには近付くな。
　理性がそう警告する傍ら、何故かやる気はムクムクと準備運動を始めており、半ば無意識にDMを送っていた。



　現代の闇の深淵をそっと覗き込む旅が、ここに始まった。

年齢・身長・体型・顔…全てが不明。極めて傲慢な募集内容

　相手からの最初の返信は22：00頃。
　以降ポツポツとしたやり取りで、待ち合わせ場所・時間を決めていく。
　細かい条件は固定ツイートに表示しているのが、この手のアカウントの特徴だ。

「ゆりえ」は、以下のような条件を提示していた。



画像は筆者が作成したイメージ。

　NGだらけの極めて高慢な募集。パパ活アカウント特有の内容だ。
　唯一、「服装や髪型はなるべく希望に合わせます」というコメントだけが、こちらへの配慮を投げ掛けていた。

　年齢・身長・体型・顔の特徴…まったく不明。
　質問すれば答えてくれたかもしれないが、筆者にはどうでもいい。どうせ当てにならないのだ。
　会えば、全てが分かる。

「お寿司食べたいです！」海鮮ならぬ、開戦の刻

　翌朝。シャワーを浴びた筆者は、入念に心のストレッチを開始した。
　アポは12：30に渋谷駅。例え化け物相手になろうとも、デートはデート。
　服装だけは小奇麗にまとめたつもりだ。

　昼時という事もあり、相手に何が食べたいかを事前に聞いてみた。



　出た、THE・定番。
　パパ活女子は、みんな魚好きなのだろうか。インスタにでもアップするのか？
　まぁ、ランチ価格なら回らない寿司でも懐はさほど痛まない。某商業ビル内の寿司屋に目星を付けておく。

　渋谷へ向かう地下鉄内でも、軽くやり取りをする。




　…そして12：30。
　海鮮ならぬ、開戦の刻だ。

「帽子かぶった人ですか？」…もう逃げられない

　お互いに到着を知らせるDMを打ちながら、筆者は待ち合わせ場所のハチ公前から少し離れて待機する。
「水色のワンピの女の子」を探すためだ。

　しかし、似たような服装の女の子が複数いる。

（…ちゃんと会えるのか？）

　不安を覚えたが決意を固め、更に細かい情報を伝えながら移動する。



　遂に相手は筆者を認識したようだ…もう逃げられない。
　それとなく周囲を見回しつつ肯定のDMを送り、深呼吸をして「ゆりえ」を待つ。
　化け物が来ても驚かない平常心と、わずかな期待を胸に抱きながら。

（よっしゃ！さぁ来い！！！）





　ん？





　あれ？





　…可愛い？







　…可愛い！










　やったああぁぁぁぁ(ﾉ*´_●`)人(*`･∀･´*)人(´●_`*)ﾉぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

大人っぽいファッションだが…この子、何歳だ？

　可愛かった。マジで。ひゃっほう。
　化け物来なかった。危ないお兄さんも来なかった。

　顔は乃木坂46の「西野七瀬」系。
　まずはぎこちなく封筒を渡してから、そそくさとお寿司屋へ移動する。





　筆者のアイスブレイクのボケもさらっと流される。

　歩きながら観察すると、やはり顔は可愛い。
　しかし、大人っぽいファッションをしているが、イマイチ年齢が掴めない。
　幼そうにも見えるけど、メイクはバッチリだし…う～ん、分からん。

　…この子、何歳だ？

どこかで分かってた。気付いてた。「ゆりえ」の正体

　寿司屋に着席、メニューを開く。
　最終的にはしっかりと食える「おまかせ」を注文されたが、遠慮はしているようで、こちらがススメない限り高い物を選ぶ事はなかった。

　さて、ヒアリングターイム！！

ヒアリング①「ご飯」の内容

ヒアリング② 会った人数

ヒアリング③ ご飯以外のデート

ヒアリング④ 変な人

ヒアリング⑤「パパ」の年齢層

ヒアリング⑥ 普段の遊び方

ヒアリング⑦ ゆりえの年齢

（…はい？）





























（…14？）




















（……JC？）




















　どこかで分かってた。気付いてた。多分…気付かないフリをしてた。
　怖くて聞けなかったけど、やっぱりそうだった。
　幼すぎるんだよ、顔が。

　明るい髪色、耳にはピアス、大人っぽいワンピース。
　それでも…「若さ」は隠しきれない。

友達がいればいい。ずっと友達と一緒にいたい

　さすがに周りの目が気になってきたので、カフェへ移動することにした。

ヒアリング⑧「パパ活」の目的

ヒアリング⑨ パパの生態

ヒアリング⑩ トラブル

ヒアリング⑪ デートの相場

ヒアリング⑫ パパ活女子の生態

ヒアリング⑬ ゆりえの目標

ヒアリング⑭ 学校生活

総括

　ヒアリング後、ゆりえちゃんがトイレに行っている間、筆者は煙草を吹かしながら思わず目を閉じる。…何とも言えない疲労感だ。
　知識として、こんな女の子たちがいる事は知っていた。
　だが、目の前の体験に現実感が追い付かなかった。

　年上の男性と話す機会が多いためか、彼女の受け答えはとても大人びていた。
　自分の中学生時代は、ガキそのものだったから。
　しかし、彼女のリアクション、食事の仕方やTPOなどは、まさに年齢そのままで非常に生々しかった。

　ゆりえちゃんの「パパ活」はいつまで続くのか。筆者がいくら説こうとしても、彼女は聞く耳を持たないだろう。
　それなら、せめて危ない目に遭わず、無事に成長して欲しい…と願わずにはいられない。
　ゆりえちゃんの友達への依存度は高く、自己評価が低いのに強気な条件交渉、決して男に媚びないスタイルは、もしかすると強い承認欲求の現れなのかもしれない。

　別れ際、彼女は意味もなく、筆者が乗る地下鉄改札前まで付いて来てくれた。
　喫茶店を出てすぐにサヨナラ…そんな予想とは裏腹に。
　１人になるのが嫌なのか、女の子特有の連れション感覚なのか。
　ただ単に、『自分の後を付けられたくない』という防衛本能なのか（本人は否定していたが）。

　ゆりえちゃんの名誉のために。
　まず、彼女の家庭環境は至って普通だと思われる。
　世間一般的には、片親あるいは貧困世帯の子がドロップアウト気味に…というイメージだろうが、現実は全く違っていた。

　また、学校の成績は分からないが、少なくとも地頭の良さ、頭の回転の速さを感じた。真っ当な仕事もこなせる大人になるだろう。
　交友関係は乱れていない。タバコも酒もやらない。お金をブランド物につぎ込むわけでもない。ディズニーや韓流、アイドルにもハマっていない。
　学校にも、普通に通っている。

　ただ友達と、健全に不自由なく遊びたいから効率的に稼ぐ。
　それだけなのだ、彼女にとっては。

　尚、くれぐれもJCやJKと出会い、淫らな行為をしようなどと考えないで欲しい。
　それは立派な犯罪だ。

　最後に、ゆりえちゃんからの注意喚起を伝えよう。










　彼女の最後の言葉が、今も耳に残っている。