サイゾー 10月3日(木)11時0分配信
ニコ動系音楽=ボカロ、とおじさん世代は思いがちだが、現在のニコ動の主要ユーザー層である中高生の間では、ボカロだけでなく「歌ってみた動画」と呼ばれるジャンルから登場した「歌い手」と呼ばれる人々も人気を集めている。単なるカラオケ動画にも見える彼らの、どこにそんな魅力があるのか――?
06年に誕生し、今では国内最大級の動画サイトに成長した「ニコニコ動画」。さまざまな新しい文化を生んできた「ニコ動」で、今一際伸びているジャンルがある。「歌ってみた」動画と、そこから生まれた「歌い手」たちだ。
「歌ってみた」という言葉の通り、このカテゴリーは主に人気のボーカロイド楽曲やアニメソングを素人が歌っている動画なのだが、楽曲人気に加えて「イケボ(イケメンボイス)」と呼ばれるアイドル的な男性歌い手の存在や、「うろ覚えで歌ってみた」「~~風に歌ってみた」など「突っ込みどころ」満載の動画が人気を博し、ニコ動全体のランキングでもこのジャンルの動画が常に上位を占めている。知名度のある歌い手になると自主制作のCDでも飛ぶように売れたり、ライブハウスを満員にしたりとメジャーアーティストに引けを取らない人気で、一般的には無名の歌い手でも動画再生が数十万、ツイッターのフォロワーも10万人以上なんてこともザラ。
10年にはジャンル初期から活動する”歌い手”ピコが、11年には有名歌い手が集まって結成されたボーカルユニット√5(ルートファイブ)が、13年にはピコと同じく初期から活躍するGeroがそれぞれ鳴り物入りでメジャーデビューするなど、ニコ動の外で活動する者も次々現れている。こう並べられても知らない固有名ばかりかもしれないが、ネット上のアンチ勢からは「インターネットカラオケマン」と揶揄されながらも、その勢いは留まるところを知らない。
「歌い手さんは音楽に一生懸命なんです!」
動画再生回数ランキング上位だったり、CDデビューした歌い手の大半は若い男性である。そしてそれを支えるファンは中高生の女の子たちが大半だ。動画を再生してみても「部活で頑張った記憶と重なる」「好きな人と一緒に帰れて幸せだったときの気分思い出した!」など、青春感あふれるコメントが流れていく。彼女たちは何に惹かれているのか? 当事者である現役の歌い手ファンの女子高生に話を聞いてみた。
都内近郊在住の女子高生Aさんは同級生の影響でボカロを通じてニコ動にハマり、その過程で歌い手の存在を知ったという。今はGeroと伊東歌詞太郎がお気に入りだそう。「歌い手さんは音楽に一生懸命なところが好き!」という彼女。我々からすると、それこそ「インターネットカラオケマン」とまでは言わないが、「人の曲を歌っているだけなのでは……?」と疑問も浮かぶ。しかしAさんは「ブログやツイッターの投稿を見ていると、歌や音楽に一生懸命なのがわかる」と熱弁。一般的なミュージシャンよりも「素の自分」を晒す歌い手たちの姿に感情移入している様子だ。
また「実際に会えて、直接きちんとお礼や感想を言えたりするのも魅力」と言う。確かにジャニーズなどのアイドルは握手会のような接触イベントでも長時間会話することは不可能だが、ライブや即売会イベントなどで気軽に会話できる”歌い手”は多く、身近さにおいてその比ではない。さらにツイッターで「リプ返し」もしてもらえるとなればそのリアルさは余計増し、「会いにいけるアイドル」「身近なカリスマ」としての需要は高まってゆく。
歌い手とファンだけでなく、ファン同士もネットを通じて交流を図ることが多い。
「歌い手さんについての深い話は、ライブとかイベントの現場で知り合って友達になった子と、LINEかツイッターでやりとりします。学校とは別に思う存分、自分が好きなものをたくさん語れるのはうれしいし、楽しい。地方にも、たくさん友達できたし」(歌い手ファンの女子高生Aさん)
同様に「歌ってみた」ファンの10代の女子大生Bさんも、「ニコニコでつながる友達が欲しくて、それ用のツイッターアカウントを作ってから本当に楽しくなりました。ひとりで観てる時とはまた違った感覚で、心置きなく自分の好きなモノを話せるのはやっぱり楽しい」と言う。日頃、コミュニケーションの場が学校に終始せざるを得ない若年層にとっては、「趣味でつながる友達」の存在も新鮮なのだろう。
そうした熱心なファンの間では、「イケボ」な歌い手の声をイメージしたイラストをpixivなどの投稿SNSにアップする二次創作文化も定着している。こうしたイラストの描き手も、もちろん女性が多い。声のみをイメージしているので、本人とは似ても似つかないケースもあるのだが……。身近なお兄さん的な気軽さとオタク的要素が絶妙にミックスされて、新たな文化が形成されているのだ。
ちなみにAさんは現在、月に2~3回は歌い手が出演する都内のライブイベントに足を運んでいるとのこと。チケットは平均で3000円前後、CDもお小遣いの中からやりくりして購入したりレンタルしている。YouTubeで動画を見るだけで済ませてしまう若者も多い中、月に1万円以上音楽に使ってくれる10代は音楽業界の「優良客」。むろんそこにレコード会社が目をつけないわけがなく、メジャーデビューする者が相次いだというわけだ。
「今日のニートが明日のスター」だった
「『歌ってみた』というのは、今日のニートが明日のスターになれる場所だったんです。いい意味での緩さがあるというか、ファンと歌い手の距離が近い分、『自分でもできそう!』と思えたりするので敷居が低かった」
そう話すのは歌い手のピコだ。先述の通り10年にキューンミュージックからメジャーデビューした「歌ってみた」界のトップスターである。彼はニコ動黎明期の08年から投稿を始めた。キャリアが長い分、今のブームを冷静に見ており「当初はアングラな分、素人が集まって面白いことをやろうって空気があった。ライブイベントも文化祭みたいに出演者全員で協力して作ったり、動画も同好の士で集まって『楽しんで作ろう!』みたいな雰囲気があったんですが、最近はちょっとビジネスに寄りすぎているように感じます。そこに集まる人が増えたらそうなるのは仕方ないとは思うんですが……」と続ける。初期には携帯電話で録音したような「歌ってみた」動画もあったのだが、近年はどんどんレコーディング機材やスタッフが本格化。楽曲と共に流れるアニメーションなども凝ったものになっている。日々投稿される動画の数はあまりに多く、クオリティが高くなければ、誰の目にも留まらないのだ。
アングラだったカルチャーが、人気が出ると次第に商業化するのは、どの世界でも避けがたい道ではある。しかし、「身近さ」「粗削り感」が売りの「歌ってみた」カルチャーが、一般的なメジャーアーティストと変わらなくなってしまったら、その魅力が半減してしまいかねない。従来のロックバンドやアイドルでも、人気が出てメジャーデビューすると「遠くに行っちゃう!」とファンが離れてしまうケースも多いように、露骨な商業路線に走る「歌い手」に対しても同じような声がファンから聞こえてくることも。あるいは、メジャーデビューまで踏み切らなくとも、アフィリエイトやバナー広告、YouTubeやニコ動で行われているクリエイター支援プログラム(再生数やコメントの内容によって報酬が変動するシステム)を使ったアクセス稼ぎが主目的になり、本来の目的だったはずの「音楽」がそのための手段となってしまっている歌い手も存在するという。
時代やメディアの形が変化しても、若者が「音楽」とそれに付随するコミュニケーションを求めるのは自然の流れ。そのコミュニケーションが変容してしまうのなら、果たして歌い手カルチャーは今後も若者たちの期待に応え続けることができるのだろうか?
【出典:Yahoo!ニュース】
歌上手いヤツ、ニコ動で歌えばJCJKと出会えるぞ!!
ヤる夫も歌うから、お前らも歌おうぜ!
お前が歌っても、ボコボコにされてフェードアウトする末路しか見えない
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