WANTED
- 写真
- NG
- 名前
- 麗華(仮名)
- 年齢
- 29歳
- 職業
- メガバンク行員
- 利用したサイト
- ハッピーメール
- 出会うまでの料金
- 300円
- 出会うまでの日数
- 1ヶ月
- 出会った場所
- NG
「麗華」との出会い
「この人、何か違う…」
それが麗華の最初の印象だった。
男女問わず会話やメールをしていて、『頭の回転が早い』と感じる人がいる。
男性は常に競争社会の中で生活しているため、自己顕示を兼ねて、経験や仕事や趣味といったところで、それを表に出すことが多い。
だが、女性は必ずしもそうではない。
頭の良い女性が、必ずしも男性から歓迎されてないという事実を感じてか、それ自体に興味を示さない人も多くいる。
麗華のメールや会話での受け答えから、そう感じたのだ。
自分の経験や知識をひけらかすことはせず、こちらがその話題に入る深さによって対応してくれる。
こちらが間違いを言っても、すぐに指摘するのではなく、会話の流れの中でさりげなく気づかせ、恥をかかせないように訂正していく。
麗華は、地方から大学進学と同時に上京。
「私学の雄」と言われるような名門に現役で合格し、現在は財閥系のメガバンクに勤務している。
出張で海外に1ヶ月ほど行くくらいだから、それなりのポストに就いてるものと考えられる。
実際の彼女はキャリアウーマンという感じではなく、ちょっと地味でおっとりした感じだった。
そして、バツ1で成人した娘さんがいる。
気に入られたのか、私の話に熱心に頷き、色々と気を使ってくれた。
麗華の唇の重ね方はぎこちなく、衣服を脱がず際に少し震えていた。
「久し振り」なのか「あまり経験がない」のかと問われれば、両方かもしれない。
身体を重ねると次第に落ち着いて、接し方も円滑になっていく。
「料理が得意」と言う彼女に、「機会があれば、是非一度ご馳走に…」とお願いしたら、自宅に招待してくれた。
JR駅で降りると、麗華が車で迎えにきてくれた。
車中で彼女は言った。
「ごめんなさい。いろいろ悩んだんだけど、やっぱり自宅は無理です」
そう…警戒されて当然だ。
私は頭を切り替え、「じゃーどこかお店にでも…」と言いかけた。
「違うの、自宅は無理だけど別宅なら…」
「別宅???」
車は、ツインタワーのようなマンションへと進んでいく。
立体駐車場で車を降りた後、何重かのロック解除をして鍵を開け、麗華の部屋に入っていった。
高級マンションにて
私はマンションに住んだことはないので詳しいことはわからないが、フロントや共用部の造りを見ると、安い価格では購入できないことは容易に想像できた。
部屋は普通だが、麗華1人で住むのではなく、ファミリー用で広い。
TVを含め、生活用具は揃っている。
彼女曰く、「たまに息抜きに来たり、友達とパーティをする」際に使用するらしい。
私が「娘さんはよくここに来るの?」と聞くと、「娘はヨーロッパに留学して、その後、そのまま現地で生活してるから…年に何回か私が逢いに行くくらいかな」と答えた。
いくらメガバンクでバリバリ働いていても、マンションを2つ所有し、娘を海外に留学させている…?
計算上キャッシュフローが合わない(笑)
その辺りを質問すると、実家の援助があったとの事だった。
麗華は否定したが、実家は土地持ちの資産家らしい。
キャリアウーマンにありがちな、張りつめてピリピリした雰囲気は無い。
彼女のおっとりした性格は、家柄なのかもしれない。
麗華が料理を作ってくれている間、ソファーで寛ぎビールを飲んでTVを見る。
少しして、キッチンで料理をしている彼女を後ろから抱きしめ、服を脱がせながら愛撫を重ねる。
寝室のベットで愛し合ったが、弾力性が半端ではなく、しかも彼女が普段使ってる形跡はない。
(ここは本当に別宅なんだ…)
麗華との寝物語で、過去に出逢った経験を話したとき、彼女に笑いながら「遊び人なんですね」とからかわれた。
彼女の昔話を聞くと、以前付き合った相手は、皆ホテルの部屋をリザーブしてくれたようで、ラブホは新鮮だったとの事。
このマンションといい、少し住む世界が違う気がしてきた。
「後で合鍵を渡すから、私がいなくても来て入ってきて寛いでいいからね」
麗華は微笑みながら言った。
痕跡
「ありがとう、でも、来るときは、一緒だから大丈夫」
私が独身なら、喜んで合鍵を受け取っただろう。
麗華は独身で私は既婚。
そこまで踏み込むのは気兼ねする。
彼女は、私が既婚者であるということを知っている。
いろいろと気を遣ってくれているが、立場の違いからか、微妙な温度差も感じられた。
麗華は「こう見えても私けっこうモテるんですよ」と言って、ナンパされた話や言い寄られた話をする。
別れた旦那から連絡がある話さえもしてくる。
既婚者である以上、独身女性にヤキモチを焼くのもどうかと思い、別れた旦那の話に関しても介入すべきではないため聞き流していた。
私の反応に対して、彼女が物足りなそうな表情を見せたのは、気のせいであろうか…。
彼女との逢瀬が終わり、夜遅くに家族が寝静まった自宅に帰宅する。
私は、洗面所で鏡を見て愕然とした。
首筋には、彼女との情事の跡がくっきりと残っていたからだ。
キスマーク…独身者なら「愛の行為の副産物」であり、からかいの対象になるだけだが、既婚者にとっては「破滅の刻印」である。
家族との朝食まで…あと6時間。
作戦
(やられた…あのときだ)
身に覚えがある…。
ベットで彼女が上になり、口づけをされ、愛撫が耳から首筋に移ったとき、一度だけ強い吸い込みを感じた。
(我ながら迂闊だった。そんな事より、まずは落ち着いて考えなくては…)
しかし、私は3つの点で運が良かった。
第一に、自分で気付いた事。
他人に指摘されたら、身に覚えがあるため狼狽えてしまう。
第二に、季節が夏ではなく、晩秋である事。
夏なら薄着せざるを得ないが、晩秋なら首筋を隠す服が着れる。
第三に、今が週末ではなく、週半ばである事。
週末なら家族と1日中一緒だが、平日なら日中は仕事だ。
キスマークの正体は、外部からの圧力による内出血である。
タオルを熱湯に浸し、何度も患部に当て、血液の分散を図る。
目立たないようにクリームを塗りたかったが、普段から化粧品とは縁遠いので、何を塗ったら良いか分からない。
苦肉の策として、数年前に使ったきりのクレアラシルを塗る。
麗華には事情を話し、暫く音信不通にしてもらい、前ぶれなく私の携帯番号から電話がかかってきても、絶対に出ないことを指示した。
彼女はびっくりして謝り、指示を了承してくれた。
翌朝早めに起き、患部をチェックする。
心なしか少し薄くなった気はするが、不利な状況に変わりはない。
スーツを着て、あとは平常心あるのみだ…。
隠蔽
「ご飯できたよ~」
妻に呼ばれて居間に出る。
平日の日中は仕事、夜に残業すれば顔を合わさずに済む。
この朝さえ乗り切れば…2~3日もすれば跡も薄くなるだろう。
「昨夜遅かったね?」
妻からさりげなくチェックが入る。
男性は、化かし合いで女性には敵わない。
それでも、戦わなければならない時がある…。
「仕事がトラブってね。今日明日も残業になるから…何か相談事でもあった?」
目を逸らさないで相手を見据えて話をする。
人間は疚しい気持ちがあると、自然と目を逸らす傾向がある。
そして、話す内容を“嘘”と認識して話してはいけない。
「これは事実以外の何物でもない」と信じて話をする。
“事実”であれば、頭にそれらの枝葉が思い浮かび、自然とストーリーが作られるはずである。
「その場だけ」、「その一言だけ」の嘘を言うから、後で辻褄の合わない行動が出てくるのだ。
共働きの女性の朝は忙しい。
朝から険しい顔をした旦那に、それ以上興味を示さなかった。
麗華には1週間経って連絡をした。
彼女の行為が故意か偶然かは分からない。
ただ、彼女は別に悪いことをしたわけではない。
彼女からすれば、不満遣る方無いのが心情であろう。
しかし、今回の出来事はお互いの立場の違いを浮き彫りにした。
男女の関係は水物である。
ちょっとした小石で、関係に波紋が広がる。
それから後、やはり溝は徐々に広がり、最後はお互いを罵りあう喧嘩別れで麗華との関係は幕を閉じた…。
………はずだった。
再開
それから半年後…懐かしいアドレスからメールが届いた。
「お元気ですか?誕生日おめでとうございます」
時間の流れというのは不思議なモノで、当時の生々しい記憶を綺麗なセピア色に変えてくれる。
別れた後でも、いまだに誕生日を覚えてくれていたのは素直に嬉しかった。
メールを返し、久し振りに麗華と再会の約束をした。
アクシデントによる喧嘩別れをしたものの、本当に嫌いで別れたわけではない。
私は麗華の「優しさ」が好きだった。
彼女と初めてホテルに行ったとき、2人でベッドになだれ込み、服を脱ぎながら愛し合った。
私はネクタイを使用する際、ネクタイピンを使用する。
彼女とベットになだれ込んだとき、どこかに落としてしまっていた。
ホテルを退室する際に気付いた。
諦めかけていた私をよそに、彼女は自分の身嗜みを整えるのをそっちのけで、ネクタイピンを一緒に探してくれた。
単純な事ではあるが、彼女を「特別な相手」として意識した瞬間でもあった。
再会の日…当時と変わらない麗華が立っていた。
食事をしながらの会話でも、半年のブランクを感じさせなかった。
(よりを戻せたら…)
私は店を出た後、麗華をホテルに誘った。
彼女の反応は……。
疑念
「はい!行きましょう!」
2次会にいくノリだった。
私は、自分がホテルに誘ったことを疑うほどだった。
以前と同じように身体を重ねる。
麗華の身体に愛撫を重ね、彼女も愛撫を返してくる。
半年振りに彼女の感じる顔や喘ぐ姿を見て、ふと違和感を感じた。
(…この身体には他の男の手が入っている)
キスから私の耳、胸を愛撫し、舌をさらに降下させ、フェラで下から亀頭を丹念に舐め上げる。
彼女からの愛撫を受け、疑念は確信に変わる。
純白なキャンパスほど、異なる技法や配色が目立つものである。
別れた私に、空白の半年間を訪ねる資格はない。
麗華は真面目な女性が遊び人を装ったようにも、またHを楽しんでいるようにも見えた。
当時の震えてカチンカチンだった彼女は、もうそこにはいなかった。
寝物語でもその事には触れず、以前のようにまったりした時間を過ごした。
別れ際に「またね」と言うと、ニッコリ微笑んで麗華は帰っていった。
翌日、彼女にお礼のメールを出す。
しかし、何日たっても返信は来なかった。
(何かあったのだろうか…?)
私の胸中に、疑問と不安が湧き上がってきた。
清算
相変わらず返信の来ない日が続き、私は悟った。
麗華には、もう付き合う気がないのだ。
出会い系サイトではよくある話…仕方ない。
それから数ヶ月が経ったクリスマス…彼女からクリスマスメールが来た。
私は狐につままれたような感覚だったが、とにかく返事を出した。
しかし、またしても麗華からの返信はない。
彼女の思惑が読めないまま、ただ時間だけが過ぎる。
麗華の記憶が薄くなった翌年のバレンタイン、再び彼女からメールがあった。
「なかなか逢えないけど、この気持ちを貴方に…」
そんなメッセージが書かれていた。
こちらからのメールには返事をよこさないが、季節の挨拶便りはよこす。
私はある仮説を立てた。
麗華が「忙しいから」とも考えられるが…シビアに見立て、彼女にとって私は、『常時逢いたい存在』ではないが、『縁を切るには惜しい存在』だとしたら?
常時付き合う相手がいて、その相手がいなくなったとき、あるいは都合が悪いときのスペアだとしたら?
常時付き合う相手やスペアは私1人だけでなく、複数人いるとしたら?
彼女が何人かと同時並行で付き合い、私がそれに準ずる位置にいるとしたら?
…話の辻褄が合う。
そう考えると麗華からのメールは、コピー&ペーストの文章と考えるのが妥当であろう。
私は彼女に返信した。
「メールありがとう。覚えていてくれて嬉しいです。でも、常時お逢いできる方を探しているので、メールをしても返信を頂けず、季節の挨拶ぐらいの付き合いだったら意味がないと考えてます。今後は季節の挨拶を送るメンバーから外してもらってかまいません」
心のどこかで、麗華が否定することを願っていた。
しかしそれ以降、彼女から連絡が来ることはなかった。
人の気持ちは流水のようであり、一ヶ所に留まることはない。
絶えず速度を変え、方向を変えながら、様々な場所を流れていく。
私が見続けてきた麗華は、源流近くの上流域の部分…だけであったのかもしれない。
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