WANTED
- 写真
- なし
- 名前
- 洋子(仮名)
- 年齢
- 当時28歳
- 職業
- 専業主婦
- 利用したサイト
- ハッピーメール
- 出会うまでの料金
- 400円
- 出会うまでの日数
- 3ヶ月
- 出会った場所
- 広島県
前編
これはハッピーメールでの昔話。
洋子と知り合ったのは、恋破れて立ち直ろうとする途中だった。
彼女は私の日記に共感する部分があって、メールをくれたとの事。
洋子には3年くらい付き合っている彼氏がいたが、あまり上手くいっていない。
お互いに既婚者同士で、彼氏は色んな女性と付き合いたいが、彼女は自分だけを見ていて欲しいタイプだ。
『付き合うのは1人だけ』と考えている洋子は、彼氏にもそれを求める。
考え方が違うなら別れてもいいのだろうが、別れを切り出す度に彼氏に寄りきられてしまう。
「他の男性と付き合えば、忘れられるのでは?」
時に私は、こう進言した。
洋子が彼氏を切れないのは、彼氏の「マメさ」加減が居心地がよく、『こうして欲しい』と思うことを、タイミング良くやってくれるからという理由らしい。
「見切られている」と言えばそれまでだが、洋子にとって彼氏は代替が利きにくい存在だった。
彼女は昔の男に「放置」され続け、振り回された経験を持つ。
それを優しくケアしたのが、今の彼氏という訳だ。
3年経っても、1日50通を超えるメールのやり取り、1日置きのラブコール…なかなか真似できることではない。
「いつも側で囁いてほしい。もう、淋しい想いはしたくない」
「旦那(彼氏)とは冷めていて、旦那は外で勝手に遊んでいる。せめて、ここ(ハッピーメール)での出逢った相手には自分だけを見ていてほしい」
この2つが洋子の願いだ。
彼氏は淋しさを埋めてくれるが、他の女性にも手を出し、それを洋子に咎められ、別れ話を出されてさらにマメになる…ということの繰返し。
彼女が1番激怒したのは、「ハンネを変えたら、私と知らずにお誘いメールがきた」ことである(笑)
責めた挙げ句の切り返しは、「お前が浮気しないかどうか試した」と言い出す始末。
他の男には期待できない「マメさ」と「3年間」という歴史が、洋子の判断を曇らせている。
私と洋子は、お互いの愚痴の言い合いで始まったやり取りだったが、次第にそんなメールが日常になってきた。
3ヶ月ほど直メールのやり取りをした後、彼女に逢いたくなり、最初のランチデートに誘う。
初めて逢ったとき、写メや自己申告が『嘘だろ?』というケースは多いが、洋子は逆で予想以上に美形だった。
「水商売」をしていた経験を持っているのも頷けるほど、化粧映えする顔だち、子供を2人生んだとは思えないほど、整ったスタイル…正直なところ気後れしてしまったのも事実である。
これなら飽きたとしても、彼氏が手離したがらないのも無理はない。
性格は「気が強くさっぱりしてる」との洋子の弁、だが『彼氏との事を除く』という前提であろう。
逢瀬の終わりに、付き合いを申込んでみた。
彼女はちょっと考え、OKの返事をしてくれた。
「努力はするけど、1日50通のメールは絶対無理(笑)」
私の言葉に対し、洋子は
「大丈夫、私が仕込んであげる(笑)」
と返し、和やかな雰囲気でデートを終えた。
浮気性の彼氏との精算については、私の「しばらく並行して、気持ちの整理がついたときでいいから」との言葉に対し、
洋子は笑いながら、「そんな不誠実な事はしません。きちんとケリをつけます」と言った。
今思えば、これが私が見た彼女の最後の笑顔であった。
後編
その日の夜、洋子からメールが届いた。
そこには、「ごめんなさい。付き合えません」との内容が書かれていた。
『また彼氏に押しきられたのか』と思い、再度説いて洋子から「考えさせてください」との言葉を引き出した。
それから数時間後、洋子から「ごめんなさい、やっぱり付き合えません。もう一度彼氏とやり直してみます」とのメールが来た。
昼間の彼氏への不信感は影を潜め、絆が戻ったような洋子の言葉に“終戦”を痛感した。
私の魅力が乏しかったのも事実であろうが、数日後、逆転劇の裏側を知る。
彼女はサイトを退会していた。
おそらく…洋子1人が退会したのではなく、彼氏も同様に退会したのであろう。
「自分の退会」と引き換えに、「相手の退会」を促す。
どちらから切り出した条件なのかは分からないが、彼氏から見れば、起死回生の誠意を示せるチャンスであり、洋子から見れば、たまにこっそり再登録して、彼氏が退会したままかどうかにチェックを入れておけば、少なくとも彼氏のサイトでの女性の物色は止まる。
男女の仲は当事者にしか分からないものであるが、これが彼ら(彼女ら)にとっての結論ならば、それも1つの形であろう。
しかし…私が洋子を通して知る彼氏は、これで収まるタイプではない気がする。
ほとぼりが冷めた後、何らかの理由を付けてアドレスを変え、違うハンネで再登録…という可能性もあるのではないか。
いずれにしろ、彼女の『一途な想い』が通じる事を祈るばかりである…。
最後に
出会い系サイトの女性は無条件でモテる。
だがリアルで逢った場合、同じモテ方を維持できる女性は、男性の思い込みもあるゆえに少数であろう。
洋子はそういった意味での少数派であり、水商売の経験もあるため、男性の扱いやアプローチ方法などは熟知しているはずである。
それでも、『恋に落ちる』と自分の気持ちをコントロールできず、胸中の苦しさに悩まされる事になる。
洋子によると、彼氏は取り立ててイケメンではなく、羽振りがいいわけでもないそうだ。
『相手のニーズを的確に捉え、他人より付加価値を加えて相手に接する』
これが彼氏の生命線であろう。
「敵を知り己を知れば、百戦錬磨危うからず」-孫子-
彼氏の人間性をなじったり、洋子に同情したりするのではなく、男女間について多くの事を学ぶ出逢いだった。
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