ライターgumi
これは去年の夏の話。
私は肺結核を患ってしまった。
結核と言っても、私の感染した結核菌は他人には移らないものだったため、周りの人たちに迷惑がかからなかったことだけが不幸中の幸いだった。
当然会社にも行くことができず、自宅療養を余儀なくされた。
結核にかかった場合は保健所に出向き、職員と感染原因や症状について面談しなければならない。
保健所の職員によると、私のような若年者がこのような病気にかかるのは珍しいらしい。
事前にネットなどで自分の病気について調べた時、「結核は免疫力が下がっているHIV感染者がかかりやすい」というページを発見していた。
出会い厨として不特定多数の女性と関係を持っていたが、9割方ゴムは装着していたし、『まぁ大丈夫だろう』と思いながらも一応その場で職員にHIV検査の申し込みをした。
この話を職員にすると、ビックリした顔をしながら「偉い!それは素晴らしいことだと思います!私も是非検査したほうがいいと思ってたんですが、なかなか言いづらくて…」と言われた。
どうやら職員もHIV感染を疑っていたらしく、私の口から「HIV検査」と出たことに驚いたらしい。
『だったら最初から薦めてこいよ…』と思いながらも、私は検査の予約をした。
そして検査当日。
検査は無料かつ匿名で受けることができ、結果は当日にわかる即日検査だ。
緊張した面持ちで検査会場に行くと、既に私と同じHIV検査で来ている人たちが待合室で待機していた。
30代と思われる女性2人と、20代と思われる女性2人、そして男性が1人。
1人1人イニシャルで名前を呼ばれ、ついに私の番が来た。
部屋に入ると簡単な問診を受け、その後に採血された。
「約30分~40分程度で検査結果が出ますので、またその時間帯に待合室にお越しください」
そう看護師に言われ、適当に時間を潰して待合室に出向く。
私より先に来ていた人たちは次々と名前を呼ばれ、数分で部屋から出てくる。
きっと検査結果は陰性だったのだろう。
どことなく表情もすっきりしているように感じた。
そして待合室には私1人だけとなった。
しかし、私の名前がいっこうに呼ばれない。
私が1人になってから30分くらい経ってからだろうか…やっと名前が呼ばれた。
不安を募らせつつ検診室に入ると、白衣を着た年配の女性が座っていた。
部屋に入るなり、その女性は私に自己紹介をしてきた。
話を聞くと、どうやらこの保健所の所長らしい。
私はこの時、嫌な雰囲気を感じ取った。
そして、ついに所長が検査結果について口を開く。
「検査結果ですが…偽陽性と出ました」
私はこの言葉を聞いた瞬間、心臓の鼓動が一気に早くなるのを感じ、頭が真っ白になった。
所長は色々とフォローするような言葉を発していたようだが、全く頭に入ってこない。
とりあえず冷静さを取り戻し、追加検査をすることになった。
この検査は最初の検査よりも精度が高く、ここで陽性が出ればほぼアウトらしい。
追加検査にかかる時間は2時間。
これは、人生で1番長く感じた2時間かもしれない。
とにかく生きた心地がしなかった。
どうやって家族や友人にこのことを告げればいいのか、このまま一生HIVの薬を飲み続けなければならないのか。
ネガティブなことばかりが脳内を駆け巡り、『いっそのこと死んでしまいたい』とまで思った。
「絶望の淵に突き落とされる」とは、まさにこのことだ。
そして2時間が経ち、待合室に出向く。
名前を呼ばれて部屋に入ると、私は所長の表情からまた雰囲気を感じ取った。
しかし、これは先ほどの嫌な雰囲気ではなく、「安堵感」のようなものだった。
私の予感は的中し、検査結果は「陰性」だった。
ここ数年で1番ホッとした瞬間だった…といっても過言ではないだろう。
緊張の糸が切れ、涙が出そうになるくらいだった。
どうやら即日検査では、100人に1人の割合で「偽陽性」が発生するらしい。
私はレアケースの1人となってしまったようだ。
そして偽陽性の中で本当の「陽性」は23%で、「偽陽性」は77%。
私はこの77%に引っかかったという話だ。
この日に実感したのは、やはりゴムを付けることは大切だということ。
HIVだけではなく、他の様々な性病から身を守ることができる。
私のように、SNSや出会い系などで不特定多数の女性と関係を持つ人は、ゴムの装着を心がけたほうが良いだろう。
本当にこの日だけは寿命が縮まる思いをしたが、今後も出会い厨は続けていくつもりだ(笑)
もちろん、必ずゴムを装着することを肝に銘じて。
出会い厨がHIV検査に行ったときの話
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