
「メイドカフェ」、一度は聞いたことがあるんじゃないだろうか。
どうやら、ニャンニャンする所らしい。
話は逸れるが、この世に俺ほどメイドカフェに向かない人間は居ない。
合コンやカラオケも苦手、バカになり切れない男なのだ。
俺は、メイドカフェだけは絶対に行かないと思っていた
秋葉原を歩いていると、可愛らしいメイド服を着た女の子にビラを手渡された。
「喉とか乾いてないですかぁ?」
「喉は乾いてるね。でもメイドカフェ行ったことないの。1人だし」
「カウンター席もありますし、1人で来るご主人様も結構多いから隣同士で仲良くなれますよぉ」
(オタクみたいな男と仲良くなってもなぁ…)
「なんか恥ずかしくて…ちなみにいくらですか?」
「1時間飲み放題3,000円からになります。ワンドリンクだけでも大丈夫ですよぉ」
「ワンドリンクだといくらになるの?」
「テーブルチャージ料が700クリーミン、ワンドリンクが500クリーミンなので、1,200クリーミンだニャン♪」
「1,200クリーミン?」
管理人の補足『めいどりーみん』の通貨について
同店は、国内(秋葉原・池袋・新宿・中野・渋谷・大阪・名古屋)に15店舗、海外にも2店舗を展開する巨大メイドカフェグループ。
コンセプトの『夢の国』を演出するため、随所に様々な趣向を凝らしている(例えば、席料は「入国料」と表記されている)。
その1つが、通貨の「りーみん」である(1りーみん=1円のため、ただ単に表現を変えたに過ぎないのだが)。
ちなみに、管理人も学生時代に訪れた事があるものの、独特の“りーみん語”が飛び交い軽く混乱した。
筆者の「クリーミン」は誤表記だが、面白いからそのままにしておく。
あまりの恥ずかしさに、思わず吹き出してしまう。
「記念に一度どうですかぁ?」
しばし悩む。
俺は、メイドカフェだけは絶対に行かないと思っていた。
アニメやゲームに詳しくないから、会話をする自信も無い。
が、人生一度きり。
何事も経験あるのみだ。
何より、身体が刺激を欲しがっている。
「とりあえず覗くだけとか…ダメかな?」
「いいですよぉ、ご案内しますニャン!」
ドリンクが美味しくなるおまじないをかけましょう
エレベーターに乗ると、別の「ご主人様」が居た。
常連らしく、案内役のメイドとニャン語で会話をしている。
目を背ける。
エレベーターを降り、そっと中を覗く。
店内には対面式のカウンター席が10席ほど、奥にも丸いテーブル席が数席あるようだ。
カウンター席には5人の客が座っていて、テーブル席は満員御礼。
「どうですかぁ?」
(もうここまで来たらやるしかない…)
「じゃあ、ワンドリンクだけ」
「ご主人様のお帰りでーす!」
(帰ってないよ、初めてだよ。恥ずかしいからあんまり大声出さないで…)
カウンターの一番端に陣取り、初回ということで料金などの基本システムの説明を受ける。
1時間飲み放題で3,000クリーミン、ワンドリンクの場合も1時間制らしい。
「あと、メイドさんには触っちゃいけません。触ると溶けちゃうからニャン♪」
だ、そうだ。
「あと、呼ぶときは『ニャンニャン♪』って呼んでくださいっ!」
(呼べねーよ)
とりあえず生ビールを注文。
周りを見渡してみると、テーブル席は仲間(友達)同士だから楽しそうだが、カウンター席は皆1人で寂しそう…。
そう、ガールズバーやキャバクラとは違い、客1人1人に女の子が付くわけじゃない。
店内の客20人ほどに対し、メイドさんは4人だけ。
しかも、メイドさんは食事やドリンクなどの注文を受け、それを作って席に運ぶから、ご主人様の相手をしているヒマは無いのだ。
すると、お盆に6個くらいのグラスを乗せ、奥からメイドさんがやって来た。
そのうち1つが俺のビールらしい。
目の前にビールを置くと、
「じゃあ、ドリンクが美味しくなるおまじないをかけましょう。『美味しくなれなれニャン♪』です!」
そう言うと同時に、胸の前に作ったハート型の両手を、「ニャン♪」のタイミングで腕を伸ばして前に出す。
「えっ、俺もやるの?」
「もちろんそうだニャン♪]
「当たり前だ、何言ってんだお前」と言われた気がした。
(マジかぁ…俺のプライドが…)
やらないわけにはいかない雰囲気。やらないとおかしい雰囲気。
むしろ、やらなければ俺は犯罪者になるのかもしれない。
そう、この世界ではこれが“常識”なのだ。
結局、プライドを捨てて一緒に「おまじない」を掛けた。
恥ずかしさが、俺の笑顔をぎこちなくさせた。
ここは、こうして楽しむ世界。俺が間違っているんだ
1杯飲んでソッコー帰る予定だったが、俺の中で何かが弾けた。
せっかくだから、時間いっぱい楽しもう…と。
特定のドリンクを注文すると、ちょっとしたイベントが起こるようだ。
あるご主人様がそれを頼んだらしく、メイドさんが皆に注目するよう促した。
同時に手拍子と掛け声を要求する。
「萌え萌えぇーキュンキュンーニャンニャンぅー♪」
「かえるの歌」方式でメイドさんに続き、手拍子と共に全員で復唱する。
記事に書こうと思い必死に覚えようとしたが、あまりに聞き慣れない言葉ばかり出てくるから無理だった。
掛け声はひたすら続き、
「出てきてぇー出てきてぇー♪」
とドリンクの注文者をステージ上に呼び出す。
そして掛け声のリズムに乗ったまま、
「フリフリーフリフリー♪」
「ご主人様」が、後ろを向いてお尻を振り出したのだ。
(オメーのケツなんて見たくねーよ)
見ているだけで恥ずかし過ぎる。笑いを抑え切れない。
笑顔を作り、必死にごまかす。
笑ってはいけない。
笑ったらバカにしている事になる。
ここは、こうして楽しむ世界。
俺が間違っているんだ。
だが、さすがにワンドリンクで1時間はもたない。
掟を破り、普通に「すいません」と呼んでもう1杯頼むことに。
「じゃあ、美味しくなるおまじないをかけましょう」
「え、またやるの?」
「あたりまえだニャン!」
そうですか。
「美味しくなれなれニャン♪」
掛け声は同じだが、今度は振り付けが違う。
両手で猫の手(グー)を作り、上半身と共に左右に振りながら、最後の「ニャン♪」で前に出す。
(マジですかぁ…。俺、30過ぎの男ですよ…)
もちろんやりました。
お父さんお母さんゴメンなさい。
しばらくすると、例のドリンクを別々の客が同じタイミングで注文した。
(また始まった…)
しかも、今回はご主人様2人の共演だ。
俺は片手にビール、片手で携帯を弄るフリをして不参加。
でも、横目で見ているからニヤニヤが止まらない。面白い。
気付くと、カウンター席の客も仲良く固まり、俺は1人ポツンと離れていた。
その時、滅茶苦茶トイレに行きたくなってきた。
しかし、トイレに行く際にも「儀式」をしなければならない。
我慢しようか迷ったが、我慢できそうにない。
最終的に、メイドさんの目を盗んでこっそりトイレに行った。
そして、ほぼ1人飲みだけで1時間を消化した。
最後に
俺にはまだ早かったようだ。もう二度と行かない。
だが、最初から最後までずっとニヤニヤしていたせいか、気分は悪くない。
もしまた行く事があれば、今度はご主人様に話し掛けてみよう。
前にヤる実とメイド喫茶に行った時、突然謎のイベントが起こったんだお・・・
何故かヤる実だけステージに上がらされて、「今日は何星から来たんですか?」とか聞かれててさ
アイコンタクトで助けを求められたのに、火傷したくないからシカトしちゃったんだよ・・・
あの時のヤる実の恨めしそうな目が、未だにトラウマになってるお・・・

メイド喫茶は最初は戸惑うかもしれないが、慣れると案外楽しいもんだ
ノリが大事だぞ、ノリが

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