ライターわたなべあみ
当時、私は20歳になったばかりの大学生でした。
その頃の私は依存するほど好きだった彼氏と別れた直後で、新しい恋を見つけるべく頻繁に男友達と出掛け、六本木のクラブに通い、流行りの恋活にも参加していました。
しかし、なかなか相手は見つかりません。
そんな時、インターネットで見つけたのが「出会い喫茶」でした。
援助交際、割り切り、茶飯女(連れ出し料目的の女性)、回転嬢(短時間デートorセックスの後、すぐに店へ戻る女性)……まだピュアだった私には知らない単語だらけでした。とにかくそこでは男性が女性に声を掛け、トークをして、気が合えば外出できるシステムらしいのです。
「少し怪しいけど、直接顔を合わせてからのスタートなら、もしかしたら本当に“純粋な出会い”があるかもしれない!」
今となっては大変な笑い話です。かくして、私は淡い期待を込めて、池袋の某大手出会い喫茶へ行ってみることにしました。
いらっしゃいませ!可愛いね!
初めての日、出会い喫茶を訪れたのは学校が終わった後の夜10時頃でした。
風俗とはほど遠い人生を送ってきた私でも分かる、ギラギラ光るいかにもな看板。薄暗い店内に入ると、カウンターに黒服のお兄さんが立っていました。
「すみません、初めてなんですけど」
「いらっしゃいませ!可愛いね!」
お兄さんは人当たりの良いハイテンションな人でした。
案内されるがまま、通路の先にある半畳ほどの個室に連れられ、ソファに座らせられる私。
「じゃあこの紙にプロフィール書いて」
「年齢とか名前はテキトウでいいよ」
「店内ルールはここに書いてあるからね」
「あ、先に顔写真を撮るよ」
どんどん話を進められて、私は半笑いの顔をカメラに向けました。後で聞くと目元は隠しても良かったらしいのですが、撮られた写真を確認することもなく、場の雰囲気にのまれてしまっていました。
(偽名でいいなんてますます怪しい。やっぱり大変な所に来てしまったんだろうか…)
お兄さんが去った後で冷静になるも、怖いし、恥ずかしいので今さら「やめます」とは言えません。
そして私はプロフィールを適当に埋めて、ピンク色の会員カードを受け取ると、地下へと案内されました。向かって左側に禁煙、右側に喫煙の女性用スペースがあります。
私は左へ進みました。そこは人がすれ違えないほど狭くて、マジックミラーに向かう形のカウンター席にイヤでも座らなくてはいけません。椅子は少し高めなので、座ると向こう側から100%パンチラになる模様です。
トーク第一号は恋人に振られた草食系サラリーマン
さて、新規の女の子は大人気です。私もすぐに呼ばれました。あらかじめ渡されていた相手のプロフィールを隅々までチェックして、いよいよ個室のカーテンを開けます。
「こんばんは」
出会い喫茶でのトーク第一号。
そこで待っていたのは、サラリーマン風の男性(Aさん)でした。20代半ば、身長は170そこそこでやや細身、少しツンツンした黒髪です。プロフィールによれば、希望のお出掛けは「お酒」。どちらかと言えば草食系っぽい見た目に、私はホッとしました。
2人掛けの黒皮ソファに、少し距離を取って座ります。
「あみです。今日初めて来たんです」
「Aです。僕も初めてなんです」
なんと、2人は初めて同士でした。さらに話を聞くと、Aさんは私と同じく、恋人に振られた寂しさから出会い喫茶にやって来たそうなのです。Aさんは結婚寸前まで行っての破局だったらしく、私以上に引きずっている様子でした。それを聞いた私は同情しつつ、ますますAさんに心を許していきました。
こうして奇跡的な共通点が見つかった私たちは、出会い喫茶初体験ながらも、すんなりと外出が決まったのです。
この頃の私は“男性からお心づけを貰う”という仕組みをよく分かっていませんでした。そのため、私とAさんはチェーン店の居酒屋で軽く飲んでから、ベッドしかない狭いホテルで(金銭のやり取りなしで)一晩を過ごしました。ただのナンパと同じですね。夜と朝に1回ずつエッチをして、午前中には駅でお別れです。特に連絡先を交換したりもしませんでした。
男性からすればいいカモだったのかもしれません。ですが、逆に私もお金が絡んでいなかったからこそ、久しぶりの人肌に素直に甘えることが出来たのだと思います。
この日、失恋の痛手を他人の体で癒すことを知った私は、心の隙間を埋めるべく、しばらく出会い喫茶へ通い続けるようになります。やがて「割り切り」を知り、愛からお金へ、お金からセックスへと目的を変えながら、3年以上に渡って出会い喫茶を利用するのでした。
この体験記を読んだ男性読者の皆様、「本当に素人の女の子が出会い喫茶なんかに来るの?」と疑問に思われることでしょう。
極々稀に、そこには素人女子大生が紛れ込む事があります。女の子には、いつでもジェントルな気持ちを忘れずに接してあげて下さい。
これで、私の出会い喫茶初体験は終わりです。
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