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出会い系サイト道を極めし男達

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出会い系サイト道を極めし男達
読者投稿30代後半の男性

 ドーン!

     ドドーン!!



 「起床!!!!!!」



 朝6時、男達は布団から一斉に起き上がり携帯を開く。



「13通!」

「22通!」

「18通!」

「21通!」

「6通!!滝に打たれてきます!!」

「14通!」

「5通!!滝に打たれてきます!!」

「10通!」




 「返信メール作成!!!!」




 男達は一斉に返信メールを作成する。




----------------------------------------------------------------------------------------------------------




 どの世界でも、その道を極めんとする者達がいる。



 出会い系サイトに魅入られた者達が修業する場所。




『煩悩寺』




 これは、そこに足を踏み入れた男、裕也の物語。




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「その1!相手は自分の鏡だと思え!!されて嬉しいことをしろ!」


「その2!リアルもサイトも変わりはしない!常識から外れるな!!」


「その3!適度なユーモア!!しつこいユーモアは嫌われるだけ!!」


「その4!押し付けるな!出会いたいと思わせろ!!」


「その5!直メという単語は一切使うな!!」




「はい!!!!」



 裕也は慌ててメモを取る。



 「そこ!メモを取るな!!復唱して覚えろ!!」



「は、はい!!」




 裕也は基本的なことを学びながら思う。




(やっぱりここも「当たり前のこと」を学ぶだけか…?)





 昼食を取りながら、全員携帯をチェックする。





「12通!」

「18通!」

「24通!」


 「よし!」


 男の食事に肉が追加される。


「14通!」


「6通!」



 「失格!」



 男の食事が下げられる。



 「飢えろ!お前にはハングリー精神が足りん!!」


「はい!!」




 裕也は恐る恐る、自分の携帯を見る。




 4通の受信メール。


 裕也もまた、昼食は抜かれてしまった。





 自分の何がいけないのか。

 何故、自分のメールには返信が少ないのか。

 一人よがりなのか。

 無礼だったのか。

 自分に魅力がないのか。

 あのメールは滑ったのか。





 ここに来る前にも、裕也は出会い系攻略サイトなどを読みあさった。


 そんなサイトを読みあさっても、いつも当たり前のことばかり書いてあった。



 マメに連絡しろ。

 優しい言葉をかけろ。

 甘えさせろ。



 そんな当たり前のことをやっても、それほど成果はなかった。

 あからさまに寂しそうな、暇そうな奴から冷やかしっぽい返信が来る程度。





 自分が思うほど返信がなかった。




 隣の冴えないおっさんは常時、20人以上と定期的なメールのやり取りをしている。




 何がいけないんだ。




 恥を忍び、冴えないおっさんに相談する。






「うーん。サイト全体を見てる?絶対に送っちゃいけない相手がいるとかわかってるかな?」



「…わかりません」



「経験が必要だけどね」



「教えてください」



「ネタが欠乏してる日記廃人に送ると晒されるよ?」





(…言ってる意味がわからない)








 プロフィールを変えればいいのか。


 そう思い、裕也はプロフィールに写メを載せてみたり、


 少しエロを匂わす単語をプロフィールに混ぜてみたり、


 でも「一途」という言葉をいれてみたり。


 焦れば焦るほど、返信率は悪くなっていった。









「裕也くん、ちょっと来なさい」



 突然、住職に呼ばれた。



 住職は優しい微笑みでこう言った。




「…裕也くん。何故、返信率が悪いかわかるか?」


「…いいえ」


「じゃあ、質問を変えよう」


「はい」




 「最近、誰から返信がなかったか、わかるか?」




 住職の顔からは笑みが消えていた。



 裕也は誰に送ったのかすら、わかっていなかった。




 「昨日、裕也くんが送ったメールを読むから聞いていなさい」




『突然のメールすみません!

 プロフを見て気になったので思い切って、メールしちゃいましたw

 よかったら仲良くなりませんか?

 私は○○で働く28歳です。

 平日の夜は割と寂しい時間を過ごしてますw

 そんな時間を共有出来る人がいればと思っています』




 「…コピペだな。基準は何で送っておる?」




「…地域と年齢だけです」



 「お前さんは、あからさまなコピペメールを貰って嬉しいのか?」



「………」



 「よかったらって、何がよかったらなんだろうねえ?」



「……………」



 「こんなメールで返信があるだけ感謝しなさい」



「でも、数打てば…」



 「自分を見つけてくれたんだ…。そんなメールのほうが嬉しいのでは?」



「…はい!」






 当たり前のこと。


 それが出会い系サイトというだけで感覚が麻痺していく。



 …メールの数。


 いつの間にかゲーム感覚に陥り、数にこだわるあまり、人としての当たり前のことが出来なくなっていく。




 裕也は相手をきちんと見てから送信するようになった。

 一人の人間として。

 相手はどんな人か。

 この人と会えば、どんなデートをするか。

 想像を膨らませてから、メールを送信するようになった。


 送信数は大幅に減ったが、少しずつ返信率が上がってきた。


 もちろん、100%の返信率なんてあり得ない。

 それでも70%程度にまで上がってきた。





 そして、裕也が心を込めたメールを送るようになり、返信が来た時の喜びは倍増した。





 裕也は嬉しそうに受信メールを見る。









「メールありがとう!

 丁寧なメールで嬉しかったです。

 いつも大体、どのあたりで飲んでるの?

 ○○あたりだったら、是非一度ご一緒に飲みたいです」




「メールありがとうございます。

 プロフィールをちゃんと読んでくれてるんだなってわかりました。

 ゆっくりでいいので、メールでお互いを知っていければと思います」





「あははは!

 面白いメールありがと!

 そうなんだよー。自分もメル友からっつーか、時間かけて仲良くなりたいしw


 とりあえず写メ送るね」







「突然のメールなんて迷惑じゃないですよ!!

 女の人からメールなんてほとんどないから嬉しいですよ!

 で、いつ会う?」






「YUKOさん、メールありまと!

 プロフ写メ見たけど、すっげ美人じゃね!?

 いくら!?」












『煩悩寺』












 サクラを極めんとする男達が集う場所。



 オチでワロタwwwww

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